2017年8月9日水曜日

老後の身体活動性


 年をとると、いろんな動作が億劫になってきます。椅子から立ち上がるだけでも億劫で、『どっこいしょ』などと掛け声をかけなければ立ち上がることが出来なくなることは皆さん、身に覚えがあると思います。何かをするときに最初に『どっこいしょ』などというと、『年だねえ』などとからかわれることもあるのですが、言っている方も内心そのことを自覚しています。『寄る年波には勝てない』などとも言いますが、私たちの筋肉量はある年齢を過ぎると衰えてきます。

 握力で見た場合、男性で26kg、女性で18kgというのが筋肉量低下を評価する上での一つの目安となります。しかし年をとってからでもトレーニングによって筋肉苓及び運動能力を増強させることも可能です。その事実を私は身をもって経験しました。3年ほど前、私が65歳の頃ですが、妻が心臓病で手術のために入院した時のことです。彼女の入院先の病棟が9階にあり、そこに付き添うとなるとエレベーターで9階まで上って、あとは日長1日傍に付きっ切りということになりかねません。

 じっとしているとこちらのほうも体が不調を訴えますので、手術後3日目から私は9階まで歩いて上ることにしました。病院の部屋の天井にはいろんな配管がなされており、そのために1回ごとの高さの差が普通のビルより大きいのです。一段15cmほどの階段を一階分上るのに37段を要しました。これが9回まで、つまり333段を登って妻の部屋にたどり着く羽目になったのです。最初の時にはたどり着いたときにどちらが患者だろうというほど疲れ果てていました。

 しかし運動した後は気分爽快になります。そのために私はその時からちょくちょくその病院の一階にあるローソンなどに買い物に行くのに階段を昇降するようになりました。口実を設けて13~49回までの階段を上り下りするようになり、そんな生活を2週間ほど続けたら、明らかに体力がついてきたのです。週末自宅に帰る時には天気に恵まれていたら街中までの13kmほどをカメラを片手に歩くのですが、山道をのんびり写真を写しながらの散歩ですから4時間ほどかかっていました。

 それが、妻の入院中の筋トレの後同じコースをいつもと同じように写真を写しながら歩いて3時間を切っていたのです。65歳になっても筋トレの効果は如実に現れる。これは私にとって、自分が実感した運動の効果としては劇的でした。一方、10日間臥床すると筋肉蛋白の合成能力が三割ほど低下することが分かっています。一般に勤務先を定年で退職する頃といえば、私が9階までの階段を休むこと無しに上っていた頃です。退職した後、部屋でごろごろしながらTVを見て風呂に入って、ビールを飲んで、食事を済ませて、しばらくTVの前で転がって、そして寝る、そんな生活をしていませんか?

 人の体は起きて動くとそのことで重力に抗して筋肉が姿勢保持のために活動します。その活動が筋肉量の衰えに抵抗するのです。日長ごろごろしていると筋肉量が低下して、フレイルという寝たきりの一歩手前の状態になります。後は要介護、寝たきりの生活に一直線となってしまいます。そしてひとは排泄を他人の手を借りる段階で自尊心が吹き飛んでしまうことが多い、その時点で心が壊れてしまう場合もあるのです。

 そうなってもなかなか死ねない。日本の病院では、裁判で妙な結果がでることを避けるために、とことん生かしておこうとします。体のあちこちに妙な管がついて、生命だけを維持するための補助手段によって生かされていくのです。そうならないためには出来るだけ体を動かして、筋肉量を低下させないようにする、そして関節の痛みを抑えるための手段を講じる、私たちが人間としての尊厳を持ちながら快適に一生を終えるためにはそうした事が欠かせないのです。



2017年5月22日月曜日

マダニの季節

 マダニという節足動物がいます。これは病原性医動物と言われるもので、マダニを介して様々な伝染病に感染します。刺し口から感染して、局所に膿瘍を作ることが多いのですが、稀に死に至る出血性の病気を媒介することもある恐ろしい生き物です。体調は2~3mmほどで、マダニにも様々な種類があるようですが、どのまだにも安全と言うことはありません。

 2~3mmと言いましたが、血を吸った後では小豆よりも大きく、大豆ほどになり、色調は赤黒く毒々しいものになります。不気味です。そのマダニですが、咬まれたと気づいてパニックになり、皮膚からはがそうとすると吸い口の部分だけ皮下に残ってしまうことが多く、その部分から膿んでしまいますので、素人判断で引きちぎったりせずに来院してください。

 来院まで時間がかかるとか、何か急ぎの用事があってすぐにはらい印できない場合にはメンタムを多めに掬って、マダニを完全に多い尽くしてください。数十分すればマダニが窒息しますからそのときにそっとティッシュペーパーで拭いてみたらきれいに落ちるかもしれません。もしそのときに落ちなかったら、病院を受診するのがベストです。吸い口の付近を小さく切開して除去しなければならないからです。

 くれぐれも自分で引きちぎったりしないようにお願いします。吸い口だけが皮下に残った場合には、運が良くても大きな膿の塊に悩まされるし、運が悪ければ死んでしまいます。まだには野生動物によって運ばれて、草の葉っぱなどにくっついて哺乳動物が通りかかるのを待っています。不用意に草むらに入っていくとマダニに寄生されますので、この時期あまり草むらに入らないのがベストでしょう。血を吸っていない写真を上げておきます。左がマダニの背中、右の画像はお腹です。吸い口は千切れていて、この写真にはありません。体長3mmほどでした。

2017年3月15日水曜日

趣味の血糖値測定


 少し前から私自身の健康管理(これは建前)を目的として、血糖値簡易測定キットを購入、食後90分での血糖値測定を始めました。私自身はHbA1c5.5%前後と充分正常範囲内にあるので、糖尿病の恐れがあるなどと考えたこともなかったのですが、単に理科の実験的なノリで、始めたのでした。正常人では血糖値の変動が食事によってどんな具合になるか、それだけでも十分面白いと思っていました。ところが、測ってみると予想とは大違い、充分糖尿病予備軍だと言うことが分かりました。

 糖尿病と診断される前に、境界領域といわれる段階があります。食後高血糖が見られるけど、やがて正常化する。大まかに言えばそんな状態です。そして私もそのグループに分類される状態だと言うことがわかったのです。ちょっとご飯を食べ過ぎると簡単に140を超えます。しかし翌朝は何事もなかったかのように正常値に戻っているのです。ですから、健康診断などで、朝ごはんを抜いた状態で採血されると、当然正常値を示すわけです。それで長年糖尿びょとは無縁だと思っていたのです.

 今、食事内容を簡単にメモして、90分後の血糖値と一緒に記録しています。するとどんなものを食べたら血糖値がどうなるか、だんだん明らかになってきました。私は生野菜が大好きなので、食事は生野菜から始めます。その生野菜に豆腐を乗せ、ヨーグルトをかけ、そしてゴマドレッシング+ごま油の野菜サラダです。もしサラダを作るのが面倒なとき(朝寝坊など)は、果物の含まれていない野菜ジュースにヨーグルトとオリーブ油をたらして飲みます。これが食事の始めです。

 それに続いて、魚を食べます。魚はある時にはハタハタを甘酢で似たもの、秋刀魚を焼いてレモン汁をかけたもの、マグロの切り身にわずかに醤油をかけてオリーブ油で漬け込んでまる一昼夜置いたもの、鯛のあらを薄い塩味で煮込んだものなどです。次にチーズオムレツ。朝は、これにパンを40gほど食べておしまいです。昼はオムレツの代わりにお肉をプラスします。お肉は豚軟骨をこんがり焼いた奴、鶏モモ肉をカリカリに焼いた奴などが多いのですが、ムネ肉を塩麹に漬け込んだ奴を焼いて食べることもありますし、時々蒸し鶏を作ることもあります。ご飯を1/3合ほどたべます。

 夕食にはサラダ、魚、肉のほかにチーズをかじったり、気が向けばアルコールを少したしなみます。私はお酒を分解する酵素があまり作られないようで、少し飲むだけで充分に酔いが回りますので、一人で飲むときには100ml弱でしょうか。友人が遊びに来たときなど、150mlも飲むことがありますが、それはかなり珍しいことです。だから夜の血糖値は概して低い。しかしそれでは面白くないので、時々実験を試みるのです。それは度を越した大喰いが血糖値にどのような影響を与えるかと言うものです。

 以前すしを10貫食べてその後に小さめの饅頭を10個食べると言うことをやってみました。食べ終わった後に気分が悪くなったので、これは食べすぎですが、90分後の血糖値が209に達していました。その逆に、サラダの後に生わかめのしゃぶしゃぶ、そして刺身2種類(自分で調理するので多少とも豪快な量です)、そして鶏モモ肉のワイン蒸し(これは玉ねぎと人参をみじん切りに師、ベーコンをいためて、ついで鶏モモ肉を炒め、それらをどかして人参と玉ねぎをいため、それらを一緒にして白ワインで煮るというもので、火が通ったら、玉ねぎとにんじんを裏ごしするのですが、面倒なので、そのまま食べます。

 刺身とモモ肉のワイン蒸しに日本酒を2合近く飲み続けた後の血糖値は88でした。この日も充分満腹したのですが、血糖値はほとんど上りませんでした。どのような食事で血糖値が上り、あるいは上らないか、そういった情報は多くの人たちのご参考にもなると思いますので、次回はその生データをお示しします。乞う、ご期待!

2017年1月23日月曜日

今日のレシピ - 生野菜


  少し間が開いてしまいました。今回は食べ物の話です。それも野菜、野菜を美味しく食べるための方法について述べます。

 生野菜といえばサラダ。サラダはどうも…という向きも少なくないでしょう。加熱したほうが容積が減るので食べやすい。加熱すると味も変る。断然美味しい、云々。しかし生野菜も美味しいものだし、加熱すると失われる栄養素が失われないで残るのが嬉しい。野菜サラダが食べ難い理由の一つはドレッシングにあります。野菜にかけるととても美味しいドレッシングであれば、食事時に摂る生野菜の量も増えようというもの。そこでドレッシングについて。

①玉ねぎドレッシング
              玉葱、醤油、酢、オリーブ油
玉葱を薄切りし、酢と醤油と油を同じ分量で混ぜた混合液に浸す
全体がひたひたになるように分量を考えること。塩分過多を戒める必要のある人は酢と醤油を21にしたら良いと思います。オリーブ油の分量は酢と醤油の合計量の半分ほどです。

②バルサミコ酢とオリーブ油のドレッシング
このドレッシングはどのランクのバルサミコ酢を使うかで味が決まるので、バルサミコ酢は張り込んでください。混ざり物なし(ぶどう果汁のみ)の8年物が最低でも欲しい。
野菜にバルサミコ酢をかけ、その上にオリーブ油をかけるだけです。

③ゴマポン酢とごま油のドレッシング
              野菜にゴマポン酢をかけるだけだとあまりにも平凡だし、味も普通なので、一ひねり。ポン酢とオリーブ油はドレッシングの定番の一つですが、オリーブ油では平凡だし、誰でもやっていそうなので、ごま油を用いてみました。ごま油もオリーブ油に劣らず健康によさそうで、特有の食欲を刺激する香りもあるのでどうかと思ってやってみました。この場合にはポン酢もゴマポン酢のほうがなじみが良かったように思います。ゆずポンなどではもう一つ両者の味が一つになってくれません。比較的香りが強いので、味の強い野菜を用いても良く馴染んでくれそうです。

④レモンサラダ
これはドレッシングではなく、サラダそのものです。子供が苦手とする食材を用いたものですが、多分ほとんどのお子さんが喜んで食べるので、是非食卓を飾るようにしてください。
1        材料:人参、ピーマン、セロリ、胡瓜、レモン果汁、オリーブ油、イカ薫
2        人参、胡瓜をマッチの軸の半分ほどのサイズに拍子木切り、ピーマンは縦に割って種を出し、幅1mmの薄切り、セロリも1mm程度に、イカ薫は適当な大きさに切って全部を一つの容器に入れる
3        レモン果汁(ポッカレモンなどでも可)を容器のした1cmほどになるまで注ぎいれる
4        オリーブ油をレモン汁と同じ程度の分量を目安に入れる
5        1時間ほど待てば出来上がり
このサラダはレモン汁のためかどうか、夏場に室温に放置しても半日程度で悪くなることはありません。イカのだしが出てきてとても美味しい。浸透圧のために野菜から滲んできた液体で、そのうち全体がヒタヒタになりますが、その液体も通常の野菜ジュースよりも美味しい。是非お試しください。ただし、野菜のカットサイズが大きいと味もレモン汁が野菜の抽出液と馴染んでこないのであまり美味しくなりません。


2016年11月3日木曜日

老後の趣味としての写真


 私は大学を二つ卒業するという親不孝なことをしていますので、医学部での友人たちはみな私より若く、元気です。その友人たちから時折受ける相談というのは、父親の定年時に何かプレゼントしたいけど、何が喜ばれるかというものです。彼らの父親と私が年齢が近いということを暗に言いたいのではないかと勘繰ったりしていますが、純粋にそういった疑問を解決すべく私に尋ねているだけなのかもしれません。

 私はその質問に対しては『デジカメ』と答えることにしています。ある程度重たい、しかし重過ぎて持つのが嫌になるようなものは避ける、という注釈付です。重たいデジカメとなると本体だけで1.5kgほど、野鳥などを撮影しようと思うと、バズーカ砲みたいな形をした6kg程度のレンズをそのカメラに装着し、やはり6kgほどの三脚に乗っけるという重労働を厭わないようにする必要があります。

 そういった苦行は若い頃に始めて、お金が出来るに従ってだんだんステップアップするというスタイルをとらないと、買ってもらっても決して長く続けることはありません。第一、フィールドに出るだけで疲れ果ててしまうのです。レンズ込みで1kg前後、最近流行のミラーレス一眼というのが狙い目でしょうか。1kgというのはそのカメラを持つことが筋トレになるという効果も考えての上です。そういったカメラを手に、お父君が何かを撮影してきたら、とりあえず自然な形で褒める、これを忘れてはいけません。

特に自然を撮影したものを褒める、そうすることで野山を歩き回って木花とか山や川を撮影する機会が増えるでしょう。そのことが足腰の鍛錬になり、認知症予防につながり、いつしか写真も上達するものです。もし何らかのコンテストで手ごろなものがあれば、それに応募するというのも有効だと思います。入賞すれば嬉しいので、きっと写欲が湧く、するとますます被写体を求めて歩き回る、健脚になる、行動範囲が広がる、といった具合に万事が良い事尽くめになるかもしれません。

しかも、奥さんの立場からすれば、退職して家に一日中いられたらたまったものではありません。亭主元気で留守が良い、というわけです。ですから元気に日中の山を歩き回って、沢山写真を撮って帰宅する。夜はその写真をPCで確認しながら整理するという作業をこなすことになりますので、その面からも認知症予防に大きく貢献することは間違いありません。高齢になってから、そんなハイテクな事など分かるはずがないなどと考えずに、一緒になって写真の評論などしてあげましょう。

 ここで一言注意事項を。お父君の写真を褒めるときに、褒めすぎてはいけません。昔私の後輩が写真に少し入れ込んでいたときの事、一枚の写真を見て私が『諸君、脱帽し給え!ここに天才が現れた』と言ったらひどくむくれました。あからさまな、聞くまでもなくお世辞(と言うより、むしろ嘘)と分かるような褒め言葉は禁物です。自然な形で、『ここはもうちょっと○○したほうがいいね』などという批評も加えながらでないといけません、やや高級な技になりますが。しかし考えてみてください。自然経過として筋力が弱っていき、何時か寝たきりに成るその日を少しでも先延ばしにすることが出来るかもしれないことですから、一生懸命ご老人のやる気を出させてください。

2016年9月23日金曜日

運動と糖尿病


 私たちが子供だった頃、TVのある家庭は村に一見とかいう環境で、もちろんファミコンやゲームボーイなどその痕跡もありませんでした。ですから子供達の遊びは専ら戸外で走り回ることでした。女の子たちはあまりそういった走り回ることがメインとなる遊びには加わらず、男の子たちだけでチャンバラとかプロレスごっこなどに打ち興じていました。当時食糧事情が理想的とは言えず、いつもおなかをすかしていたのですが、それでも走り回って余計空腹になるようなことをしていたのです。ですからそれなりに体力はあったと思います。

 もちろん上位5%の子供達の体力は比べるまでもなく現代の子供達のほうが上です。恵まれた食糧事情、精緻な体育理論などに裏打ちされて、競技で勝つことを目指してトレーニングするのですから、鬼ごっこなどで日なが野山を駆け巡るよりも大腿四頭筋、大胸筋、上腕三等筋などの筋肉群の発達ははるかに良好だし、第一体格がいいですね。しかし、それは意識的に運動している子供達だけで、家でファミコンに熱中している子供達に関して言えば多分逆です。昔は子供のうちから高脂血症や糖尿病等に罹患するなど考えられなかった。

 最近ちょっと憂慮すべき研究結果が発表されました。それは子供の時の体力と将来の病気に関するものです。メディカル・トリビューンという医療従事者向けのサイトに紹介されていましたので、引用したいと思います。以下にその記事のコピーを貼り付けます。

10代後半の低体力が2型糖尿病のリスク
 10歳代後半の体力が低いことが2型糖尿病の危険因子である可能性を示唆する研究結果が、米国とスウェーデンの共同研究グループによりAnn Intern Med2016; 164: 577-584)に発表された。長期間の追跡が必要になるため、若いころの体力と成人後の2型糖尿病との関係が検討されることはほとんどない。同グループは、196997年に18歳で徴兵されたスウェーデン人男性1534,425例を19872012年(最高年齢62歳)まで追跡。徴兵時に測定した体力(有酸素運動能力および筋力)と2型糖尿病との関係を検討した。

 3,940万人・年の追跡で、34,008例が2型糖尿病と診断されていた。解析の結果、18歳時の有酸素運動能力および筋力が低いことと2型糖尿病発症リスクとの間に独立した関係が認められた。有酸素運動能力および筋力の最高三分位群と比較した最低三分位群の2型糖尿病累積発症率の絶対差は、追跡20年で0.22%、30年で0.76%、40年で3.97%であった。全体として、有酸素運動能力と筋力の両方が低いことは、2型糖尿病発症リスクが約3倍高いことと関係していた。これらの関係はBMIが正常な男性でも認められた。

 子供の頃に走り回って充分遊んでいないと、肥満するような生活習慣を身につけなくても糖尿病にかかりやすくなるということです。幼少時の子供の生活形態を見ると、きちんとした観察結果ではないのですが、たぶん過疎地のほうが都市部よりも外で遊ぶことが多いのではないでしょうか。そして外で遊ぶということは必然的に体を使うことになるので、将来糖尿病にかかりにくくなる、と考えてよさそうです。

 もし都市部にお住まいの親戚の方などに小さいお子さんがいたら、しばらくこちらのご家庭で預かって外を走り回らせてみたらどうでしょうか。その子供達が将来糖尿病になるリスクを1/3に減らすことが出来るのです。それにおうちに小さい子供達の笑い声が満ち溢れると、年をとった私たち大人の生活にも活力が沸いてくるものです。


2016年8月22日月曜日

肥満は脳の老化を早める?


 私たち医療従事者が良く閲覧しているSNSの中に『ケアネット』というのがあります。そのSNSに興味深い記事が掲載されていました。私たちの生活習慣の中で、代謝が年齢とともに低下するのに食欲が低下しない人に特有の問題、つまり肥満がかなり広範囲な影響を及ぼしていることを示唆する研究が発表されたのです。以前から肥満に対して様々なことが言われています。曰く『肥満の人は糖尿病にかかりやすい』、曰く『糖尿病の人は認知症になりやすい』、曰く『肥満の人は心血管系の疾患を患いやすい』、曰く『肥満の人は脳血管疾患になりやすい』、曰く『肥満の人は痛風になりやすい』、曰く…きりがないからこのあたりでやめておきます。さて以下にその記事の抜粋を示しておきます。

 『新しい研究で、過体重や肥満の人では、中年期から脳の老化が早まっている可能性が示された。この研究は、過体重が脳の白質にどのような影響を及ぼすのかに焦点をあてたもの。白質は脳領域どうしの情報伝達に重要とされる部位であり、加齢とともに縮小することが知られている。しかし、今回の研究では、50歳の過体重および肥満の人の白質量は、60歳の標準体重の人と同程度であることが判明した。ただし、この研究では肥満と老化の加速との因果関係は証明されておらず、肥満者と標準体重の人で認知機能に差はみられなかったという。

 今回の研究では、ケンブリッジ地域に在住する精神的に健康な2087歳の男女500人強を対象に調査を行った。対象者のうち約半数が標準体重で、約3割が過体重、約2割が肥満であった。MRI検査で対象者の脳構造を評価したところ、過体重や肥満の人では、標準体重の人に比べて白質量が減少していることがわかった。年齢別の解析により、中年期の過体重や肥満の人の白質量は、10歳年上の標準体重の人と同程度であることも判明した。この「10年の格差」は中年期以降の対象者でのみ認められ、2030歳代ではみられなかったことから、加齢に伴って脳は体重増加による悪影響を受けやすくなることが示唆されたと説明している。

 ただし、現時点ではBMIの増加と白質量の減少がどのように関連しているのかは明らかにされていない。「過体重や肥満であることが脳に変化をもたらすのか、脳の変化が脂肪細胞を増やしているのかも不明だ」と、同氏は指摘しており、「減量すれば脳への悪影響を減らせるかどうかも結論づけるのは難しく、今後検証していきたい」と述べている。

 この知見は、「Neurobiology of Aging」オンライン版に727日掲載された。』

 肥満の人が糖尿病(Ⅱ型)になりやすいのは以前から明らかになっていたことで、糖尿病の人が認知症になりやすいのも統計的に明らかになっています。それだったら、肥満で脳の機能が低下するのは必然的に導き出されるとも思うのですが、この研究は肥満が直接に脳の白質量が低下することを示したところにあると考えます。医学や医療に関係した基礎的な研究は本当に少しずつ、カタツムリのように進んでいくのですが、気が付いてみるとずいぶん遠くまで来たものだと思うことがあります。

 60年以上昔の話ですが、私の祖母が脳出血で半年間寝たきりの生活をしていたころ、当時は静脈内に輸液するという概念がなかったか、あるいは田舎までそうした斬新な思想が行渡らなかったからか、彼女は大臀筋に生理食塩液を毎週一回『筋肉注射』されていました。相当痛かったようで、注射の間中大声で痛みを訴え続けていました。今は静脈内に直接輸液製剤を注入するというだけでなく、様々な病態に合わせて多くの種類の輸液製剤が利用可能です。

 当時の医療界から今日の医療を眺めてみると、昔は死の病だった腎臓病が今は透析という手段で対処可能になっています。若い人に対してだと、腎移植も選択肢に入っています。それどころか心臓移植も大騒ぎするようなことではなくなっています。様々な「原因不明」の疾患の原因が解明されてきており、癌の薬物療法もかなりの種類の癌に対して有効なものになってきています。

 最新の様々な知見をこれからもご紹介していきます。それらの知見を実生活に導入して、健康な生活をするか、それともそれらを無視して気ままに生きるか、それは読者諸氏が自分の責任で決定すべきことで、それについてとやかく言うつもりはありません。しかし、毎日たばこを20本も吸って、ごはんをドカ食いして、糖尿病と慢性閉そく性肺疾患(COPD)を患い、どうにもならなくなってから、病院を受診して「元の体に戻してくれ」と言われても我々に手の打ちようはありません。そのあたりのことはよく考えたうえでご自身の生き方を決めて行っていただきたいと思います。