2018年1月10日水曜日

自分の健康を守るために

あけましておめでとうございます。

 年末から年始にかけて多少羽目を外した、という方は決して少なくないと思います。食べ物とアルコールに関してのことです。お酒を体の許す範囲を超えて飲み続けると、肝機能に異常が発生します。肝臓は沈黙の臓器で、よほど悪くならないと自覚症状が出ませんので、4週間にわたってお酒を飲みすぎたとしても、自覚症状の方はほとんどないと思います。しかしそれを何年も続けると、はっきり自覚症状が出てくるのですが、その時点では回復がほとんど見込めず、移植などの手段が残るだけです。血液検査では、自覚症状が出るよりもかなり前に異常値を記録するようになります。

 塩辛いものを(ドクターストップを無視して)食べ続けると、高血圧だとか腎機能の悪化などがはっきりと検査に表れてきます。ごはん、お餅、そば、うどん、それに芋類を食べすぎると血糖値が上昇し、人によっては血糖値スパイクと言われる短時間の超高血糖が見られるかもしれません。こうしたことがあなたの、そして私の健康をむしばんでいきます。だから摂生をするという事は、急に襲ってくる腹痛や頭痛から身を守るというより、知らず知らずのうちに忍び寄る生活習慣病を予防するということになります。

 でも、同じものを食べても人によって血糖値が異常に高くなる人がいると思えば一方ではほとんど血糖値の変動がない人もいる、そういった事実があります。ほとんど脂っこいものを食べていないのに、高脂血症、高コレステロール血症に悩まされている人がいるかと思えば、毎日卵を数個食べているのに平気な人もいます。こうしたことは同じものを食べても身長が高くなる人がいる一方で体重にだけその食べ物の効果が表れる人がいるのと同じ理屈、つまり個体差です。

 あなたの体は何を食べたらどうなるのか、そうしたことはなかなかわかりません。仮におなかが痛い、という理由で病院を受診しても前日に何を食べたか、その中の何かが悪さをしたのではないか、そうしたことがあまりはっきりしないのです。中には食べ物の中身や量を控えめに報告する方もいるでしょう。覚えていないという人もいないとは限りません。ましてや、生活習慣病では毎日の暮らしの中で、何が問題か、そういったことを一番(心の底で)自覚しているのはご本人でしょうから、そうした健康管理はご自身で行うのが一番いいのです。

 そうした御要望に応えるべく、当院でミニドックを始めることにしました。その内容はドラッグストアなどで最近行われるようになった検査と同様なものですが、検査用の機械は一台ずつ、わずかに結果が違ってきます。誤差という奴ですが、我々が慣れ親しんでいるのは当院の検査機器です。何か非常事態というべき結果が見られた場合、その場で当院を受診して医師の診断を待つということが町のドラッグストアでの検査と大きく異なる点です。そしてドラッグストアでの検診結果を解釈するには、病院のスタッフも多少とも時間がかかります。その機械の誤差が原因です。

 どのような検査をどのようなコストで実施するか、それは近日発行する「スマイル」で確認してください。この度のミニドックですが、せめて毎年一度は自分の健康状態を知っておこうという趣旨で始めることにしたのですが、健康に興味のある方は2か月に一度という割合で検査を続けるというのもありです。その場合、例えば肝機能の指標がだんだん上昇していることから、このあたりでお酒の量を減らした方がいいといったことが誰にでも分かるようになるというのも大きなメリットです。

 これは診療科の受診ではありません。単に来院者の方の血液を少し取らせていただいて、その検査結果をお返しするというだけのことです。検査結果の詳しい解釈などをご要望でしたら、診療科を受診していただく必要がありますので、その点はくれぐれも誤解のないようにしてください。

2017年12月27日水曜日

忍び寄る暗殺者

 本人に全く被害を受けたという意識がない状態を保ちながら少しずつ体に毒を注ぎ込むという、巧妙な手口で人を殺害したり、もしくはADLを極端に悪化するような刺客がいます。この平和な国・日本に。そういえば、明治のおしまいの方か大正時代に、夫を毒殺したという事件があったそうです。コロッケにヒ素を混入して毎日亭主に食べさせたとかで、それがニュースとして全国に知れ渡り、コロッケの唄が流行したという話を聞きました。思い違いかもしれません。毒物混入というと、ヒ素カレー事件が新鮮ですね。

 しかしここでご紹介するのはもっと違う刺客、糖質です。糖質がなぜ刺客になるのか?そんな疑問を持つ方は少なくないでしょう。血液中に糖質として存在する、そしてエネルギーのもとになる糖質の代表がブドウ糖、これは6つの炭素が互いに結合して輪状になっています。そして各々の炭素に酸素と水酸基(OH)が結合しています。しかし血液中で0.01%程度が、輪状ではなく直鎖上になっています。その直鎖のブドウ糖は終端の一方がアルデヒド基になり、お酒の最初の代謝産物・アセトアルデヒドとよく似た生物活性を持っています。

 アルコールに強い人、弱い人があるように、直鎖アルコールのアルデヒドの攻撃に強い人と弱い人がいるのは考えられることです。糖尿病と診断されてあまりHbA1cが良いデータを示さないのに、いわゆる糖尿病の合併症を引き起こさない人がいるのはそのあたりの事情があるのかもしれませんね。その直鎖型のブドウ糖(アルドースと言います)は分子量がある程度大きいので、体内を自由に行き来できません。アセトアルデヒドより行動範囲が狭いのです。

 生物活性の強いアルデヒド基を持つアルドースは血管内皮を傷つけます。そして炎症のために様々な炎症生成物が発生し、やがて動脈硬化として完成を見るのです。その動脈硬化はおかゆのように表面が不安定で、何らかの刺激で一部がはがれて血流に乗って飛んで行ってしまうと脳梗塞や心筋梗塞が起きます。そうしたトラブルが起きなくても、血管にお粥のようなものがくっついていると、そのために血液が流れにくくなり、血液不足をきたした部分がそのために壊死してしまうのです。血管が詰まりやすいのは細い血管で腎臓の糸球体の血管などは攻撃の対象になりやすいのです。

 ほかにアルドースの攻撃対象は眼底の網膜近辺や体から離れた部分の毛細血管。従って、糖尿病の人では失明、下肢の切断、腎不全(透析に至る)が起こりやすく、実際糖尿病の合併症としてそうした疾患が取りざたされます。糖尿病とその合併症は交通事故やインフルエンザのように何時罹患し、いつ治癒したというようなはっきりした変化を自覚しませんので、今日おまんじゅうを食べても大丈夫、とかラーメンの一杯で病気になる訳ではない、と考えてしまいますね。こうした無関心や油断が糖尿病をいつの間にか立派な暗殺者に仕立て上げてしまうのです。

 刺客は炭水化物に姿を変えて忍び寄ってきます。血糖値が140を超えると体に悪さをするので、住民健診などで空腹時血糖を測定してもあまり意味がないのです。食後30分、1時間、90分、2時間、150分後の血糖値を見て、その人の血糖値が食事によってどのような時間経過をたどるか、それを知ったうえで食生活の改善方法を提案するのが有効です。そして糖尿病、特にその初期には食生活と生活習慣の改善がどんな薬よりも有効です。

 今は15分ごとに血糖値を測定してくれる装置が一昔前と比べるとびっくりするほど安価に手に入るようになりました。2週間の間15分おきに勝手に測定してくれるので、その間何時何分に何をどれだけ食べたか、その記録をつけておけば後でどのような食べ物が血糖値を上げやすいか、よくわかると思います。糖尿病になる前の人出はこの機械を保険で使うことができないのが難点ですが、一回の測定が7000円ほど(2週間で)ですので、家族での外食を一回我慢すれば十分賄えます。一家の大黒柱が糖尿病で倒れるリスクを考えたら、この程度の投資には十分意味があると思います。

 毎日500円の高価な薬を飲むよりも、毎日5000歩でよいから速足で歩く、ご飯のドカ食いをしない、などの方が体が軽くなるし、余計な出費を避けるという意味でもはるかに有効です。医療機関の収益にはなりませんが、ぜひご一考を。

2017年11月29日水曜日

糖尿病食と血糖値の推移

 せっかくの血糖値測定装置なので、有効活用しようということになり、5日間つまり月曜日の朝から金曜日の昼食までの間、糖尿病食を食べてみました。糖尿病食は一般にカロリーを制限していますので、おなかが空きます。しかしせっかくですので、ある程度極端な条件を課したほうがわかりやすい、そう考えて一日1200KCalの、当院では一番厳しい糖尿病食を5日間食べて過ごすことにしたのです。朝、7時半になったら病院に出かけて朝食を食べる。昼、12時ごろ職員食堂でお昼ご飯を食べる、夜は5時半に職員食堂で夕ご飯を食べるという生活です。

 毎日の血糖値の推移を全部お見せしてもいいのですが、あまり変わり映えしないものですし、単に食後高血糖がかなり有効に抑えられるということが分かっただけなので、二日分ほどここにUPすることにします。私が毎日必要とするカロリー(つまり食べていて体重が増加も減少もしない程度)は多分2000KCal程度だと思います。それに対して1200KCalの摂取カロリーですから毎日800KCalほど不足することになります。その不足分を私の皮下や腹腔内の脂肪で賄うとすれば、毎日100gにやや不足するほどの脂肪を使うことになります。



 つまり5日間で500gほど体重が減少する計算になります。面白いデータが取れて、しかも一週間で0.5㎏のダイエットができる。そのような皮算用に思わず頬がだらしなく緩んできたのも束の間、月曜日の昼食時にはすでに空腹でとてもつらい気持ちになりました。それ以後も少なめの食事に体が慣れるということはなく、食べた後にちっとも満腹感がないし、やがて空腹感が責め苛む。そんな状態が5日間続いたのです。何しろ食事の内容がかなり貧相で、糖尿病食だから仕方ないとはいえ、なんでこんな《実験》を思いついたのだろうなどと、実験開始当日から後悔するという始末でした。

 結論から申し上げます。健康で食事前に空腹を覚える人に1200KCal/dayの糖尿病食は無理。決してお勧めできません。なお、せっかく過酷なダイエットを実行したのですから、体内の脂肪がどの程度燃焼しているかを調べるために、血中のケトン体を測定してみました。その結果はあまり芳しいものではなく(健康という意味では芳しいのかもしれません)、ケトン体は正常範囲内で、あまり体脂肪が好調に燃焼しているとは言えないようでした。今回の教訓ですが、無理なダイエットは長続きしないということにつきます。何しろ、週の後半は頭の中に食べ物のことしか浮かびませんでした。

 なお、18日朝食時のヨーグルトとオリーブ油は病院で用意してもらった食事に含まれるものではなく、あまりの空腹に耐えられなくなって自分で勝手に追加したものです。また19日の朝食と夕食のアーモンド8粒も自分で用意したものです。したがって一日1300KCal程度のカロリー摂取になっていたはずです。糖尿病になりかけている人は、当院で糖尿病教室を開いています。そこでは私がやったような極端な食事指導はしませんので、気軽にお問い合わせください。

2017年11月1日水曜日

口腔内の健康

 医療系のサイトで興味深い記事を見つけました。それは食べることと、心身を健康に保つことの関係について述べたものです。とても大切なことなので、これからご紹介します。以下がその内容です。なじみのないカタカナはできる限り普通の日本語に直しておきました。
 「口腔機能の低下を示す飲食機能虚弱は近年提唱された概念であり、高齢者の虚弱や筋肉量減少、要介護など高齢者医療において問題となるさまざまな危険因子との関連性が注目されている。東京都健康長寿医療センター研究所自立促進と介護予防研究チーム専門副部長の渡邊裕氏は、高齢者を対象に口腔機能と社会機能との関連性を分析し、飲食機能虚弱予防を突破口として高齢者医療のさらなる改善を図る手法を第59回日本老年医学会で検討した。
 渡邊氏は、高齢者の虚弱が進行していく段階を①社会性/心の虚弱期②栄養面の虚弱期③身体面の虚弱期④重度虚弱期-に分け、各段階における具体的な状況について説明した。
 ①では活動量の低下や物事に対する意欲の低下から口腔への関心が薄れ歯を喪失し、②では咬合力の低下に起因するかめない食品の増加などに伴い食欲や食事の多様性が低下する。③では食事量が減少することで筋肉量減少や運動器症候群などが発生し、④では摂食嚥下障害や咀嚼機能不全から要介護状態、運動・栄養障害に陥るという。
 また、虚弱状態が悪循環していく悪循環においても、咬合力や咀嚼機能の低下といった、飲食機能虚弱を構成する各要素が幅広く関与するとした。
 そこで渡邊氏は、口腔機能の維持や改善を図ることで、虚弱や筋肉量減少、要介護、死亡危険度の低減が見込めるかどうかを検証した。
 検証では、東京都に在住する70歳以上の男女約1,200人を対象に、口腔への関心度や歯科受診の有無、外出頻度を従属変数として多重ロジスティック回帰(適切な日本語訳がありません)分析を行い、社会機能・生活機能との関連を分析した。
 その結果、自分の歯の本数を把握していない、もしくは把握していても実際の歯の本数と6本以上差がある場合は口腔への関心度が低下している群(低下群)、5本以内の差であれば口腔への関心度を維持している群(維持群)とすると、低下群は外出頻度の減少と有意に関連していた(図)。



 一方、「昨年より外出頻度が減少したか」との問いに「はい」と答えた群は、咀嚼困難感、口腔乾燥感、1年以内の歯科受診がないことと有意に関連していた。
 また、歯科の非受診群は機能歯数の減少や咀嚼機能、食欲調査票(CNAQ)スコアの低下と有意な関連性が見られた。さらに、「友人の家を訪ねる」「家族や友人の相談に乗る」といった社会活動に消極的である人ほど口腔機能虚弱に該当しやすくなるとの報告もあるという。
 こうした検証結果から、同氏は『航空機能虚弱予防には、地域の介護サービスや歯科医院などが連携して航空への関心を高め、社会機能、航空機能の改善を図ると良いと思われる。今後はそうした手法を確立し、地域へ普及させる必要がある』と述べた。」

 口腔内を含めて身体を清潔に保つこと、外の世界に興味を絶やさぬこと、生きることに貪欲であること、こうしたことが「ピンピンコロリ」にとっても必要なようです。もちろん「ピンピン」だけで「コロリ」抜きのほうがいいとおっしゃる方もいるかと思いますが、どうでしょうか。この世の中に知り合いが一人もいなくなって自分ひとり元気で「ピンピン」していることが果たして幸せかどうか。人間はなぜヒトとしてこの世に意識を持っているのか、そういったことも秋の夜長に考えてみようではありませんか。

2017年10月18日水曜日

血糖値の連続測定についての注意

 アボット社から血糖値の連続測定装置が、価格破壊的な代価で販売されたことは、最近のブログで何度かご紹介しました。残念なことですが、国の保険行政上の決まりで、この装置を保険で使うにはいろいろ縛りがあります。まず糖尿病専門医が二人勤務する病院で、インスリンの連続注入器を用いて管理されている患者がいること、などが条件になります。これは膨れ上がる医療費を抑制するために理解できないこともないのですが、将来糖尿病になって、国が支払わなければならなくなる費用と比べると微々たるもののようにも思えます。貧すれば鈍するとはよく言ったものです。

 しかし、この機械を無制限に使えるようにしてしまうと、保険財政を圧迫するのも事実で、難しいものです。センサーは14日分の連続測定が可能で、一つ7000円程度、読み取り装置が8000円ほどで入手可能なので、自費で測定するということも可能です。そして糖尿病に対して一定の関心を持っている人たちが相当数存在し、自分もこれで測定したいと考えている人もいると思います。医療を職業とする人たちの中には、これを収入増加の手段とみる向きがあったとしても不思議ではありません。

 実際の仕入れ値はセンサーが税抜きで6400円前後だったと思いますので、税込みでも7000円程度になります。読み取り装置のほうは税抜きで7500円程度のもので、使いまわしが可能ですので、病院に一台あれば十分です。当院では血糖値連続測定を自費で賄いたいという方に血糖値連続測定のセンサーをお世話するという便宜を図っています。実際には測定開始前に、こまごまとした注意を与え手から、実施する、そして2週間後にその測定結果と注意点をお知らせすることになると思うのですが、結果をその場でお渡しするにしても、結果の解析には時間がかかります。

 そして解析するためには、2週間の行動すべてを細かく記載していただかなくてはなりません。いつ何をどれだけ食べたかだけでなく、いつ一休みしたとか、いつ運動したとか、ブドウ糖を消費する活動性についても記載しておいて、その結果を担当者に渡していただけないと、その後の生活指導に有用なアドバイスはできないのです。多くの人(多分ほとんどすべての人)がある程度の年齢になると耐糖能低下をきたしているようです。すると、少し前にNHKで放映していた「血糖値スパイク」が観察されると思います。

 健康でいるためには、いろいろ努力が必要です。しかしその努力をすることで、健やかに年を取っていける(少なくともその確率がかなり上昇する)ので、皆さん、健康になるために努力してください。

2017年9月20日水曜日

7月17日と18日の血糖値推移

 今回は近所のマザーリーフという軽食屋さんで朝食をとることにしました。ハニートーストとミニサラダですが、それだけだとどうしても野菜不足になるので、野菜ジュースを飲んでからそのお店に向かいました。野菜ジュースのカロリーが60KCalほどで、9時15分ごろそのジュースを飲み、一息ついて10時前に車に乗り込み、5分ほどでマザーリーフに到着。注文したハニートーストがテーブルにやってくるまで5分ほどを要しました。10時5分ごろからトーストを食べ始めたことになります。

 
 10時前に血糖値が上昇しているのは野菜ジュースのためでしょう。10時に少し曲線が下向きになっています。インスリンが分泌されて血糖値が下がり始めたようです。トーストによって再び血糖値が上昇、150ほどになっています。それから低下し始め、あまり間隔を開けずに食べた昼ご飯でやや上昇を見せますが、この時に摂った糖質量はわずかなものでご飯1/4膳ですので、血糖値の上がり幅もわずかなものでした。夕ご飯もわずかな糖質ですが、昼よりも上がり幅が大きい。この理由はわかりません。

 ひとつの可能性として、この日は自宅から任地まで19時前にドライブしたので、その間ほとんど体を動かすことがなく、つまりブドウ糖の消費量が極端に少ない状態になって、細胞に吸収されることのないブドウ糖が血管内に増加したと考えられないこともない、という言い訳じみた解釈が可能ですが、本当かどうかわかりません。いずれにしても私の耐糖能、膵臓からのインスリン分泌機能からすると、ご飯1/4膳程度が処理能力いっぱいと言ったところのようです。これを超えると血糖値が目標とする上限である140を超えてしまいます。

 その次、18日の血糖値はどうだったでしょうか。ご飯が1/4膳から1/3膳に増えていますが、アーモンドには糖質があまり含まれていないし、粒より野菜190mlのカロリーは70KCalほどで、でんぷん質として18g程度です。にもかかわらず血糖値は180に達しています。この血糖値の動きも解釈が難しいというか、言い逃れが難しいですね。なぜこのような動きを示すのか、解りません。お昼ご飯は朝食とほぼ同じメニューに豚もも肉のグリルが加わっており、分量的に多いのに、血糖値の上昇は目標範囲(80-140)に収まっています。この二つを比べてみると、とても説明に難儀します。

 この日の夕食は新たに同僚となった人たちの歓迎会で、様々な小皿が次から次に供され、満腹を軽く凌駕してしまいました。この時の血糖値は175前後をマークしていますが、それでも朝食後の血糖値よりも若干低いのです。このあたりの動きを見ると、訳が分からんからなるようになるさ、と居直ってしまいたいところです。私の個人的な事情ではそれでよくても、私が治療するその対象となる人にとっては、ケセラセラと言う訳にはいきません。何が原因で高血糖になるのか、どういった食生活上の注意をすればそれを回避できるのか、その辺を知ることは今の私よりもかなり差し迫った問題だからです。

 ここで初心に立ち返り、血糖値に影響を与える諸因子を考えてみることにしました。まず食事でとりこんだ糖質。これがなければ血糖値は上がり様がありません。血糖値を上げるものとしては、体の中で分泌される様々な物質(グルカゴン、ノルアドレナリン、アドレナリン、ドーパミン、抗利尿ホルモン、副腎皮質ホルモンなど)があり、下げるものとしてはインスリンとその関連の者たちだけです。交感神経が血糖値を上げる方向に作用するはずで、そうすれば副交感神経は下げる方向で作用すると考えられます。

 食後の血糖値の推移は食後インスリンが分泌されるという事だけでなく、食後のリラックスの程度によっても修飾されるもので、食後すぐにまなじりを決して何らかの緊張を強いられる場に向かわなければならなくなったらそれは血糖値を押し上げる方向に作用するでしょう。一方、激しい運動を要求される場合にはその運動でブドウ糖を消費するので、血糖値が上がりすぎることはないと思われます。どういったときにどのような動きをするか、それを知りたいと思ったら同じような条件を何度も作り、その時の緊張の度合いとか、ストレスのかかり具合を平均化する必要があります。

 ある程度構想がまとまったら、例えば糖尿病食を数日間続けて、その間の血糖値の推移を見たり、朝食を抜いた状態で数日間過ごすなどのことが必要になります。5日間、1200Kcal/日で過ごす覚悟がついたら、もう連続血糖値測定センサーを取り付けてみたいと思っています。全身に水をかぶって神様に願掛けするといった大げさな気持ちはありませんが、5日間の間1200KCal/日で過ごすのは覚悟が必要です。そのうち、何とか年内にやってみたいと思っています。乞う!ご期待。

2017年9月6日水曜日

糖質中心の大食に伴う血糖値の変動



  せっかく連続血糖値測定装置をくっつけたので、ただ通常の食事をしてその時の血糖値の変化を記録しても面白くないと思いました。そこで、まず最初にやってみたのが大喰。何でもキリスト教文化圏では7つの大罪の一つに上げられており、大喰というのは単にがっついている様子がみっともないと言うレベルのことではなく、色欲、強欲、憂鬱、憤怒、怠惰、虚飾、傲慢と同列に置かれるものです。尤も、私など大罪と聞けば殺人とか、放火などを思い浮かべるので、キリスト者と私では罪の概念が違うのかもしれないですね。

 過食の実験をしたのは716日の昼食。この日の朝食は9時頃。野菜サラダ150gウィンナソーセージ2本、パン2切れで、朝食としては普段どおり。前日の夜にパスタ屋さんでやや遅い時刻(午後9時~10時)にサラダ、パン(何個食べてもOK)、パスタ、アイスクリームを食べました。妻と娘が一緒だったので、彼らの食べ残しも私が平らげたのがよくなかったようです。私が食べたパスタの量は多分1.5人前よりもやや多く、そのために就寝時刻になっても血糖値が低下傾向を見せず、午前2時から4時にかけて140を超えています。

 当日の朝のやや控えめな食事の後に血糖値が180を超えているのは前夜の不摂生が原因です。つまり、前の日の食事内容が翌日の食後血糖値に影響すると言うことでこれは危険です。なぜなら、常識的な食事で血糖値が跳ね上がると、今度はリバウンドで低血糖状態に追い込まれるからです。追い込まれるなどと言うと、まるで自分のせいではないようなので、こんな表現はだめですね。低血糖状態になると、イラつくし、冷や汗が出ることもあるし、食事をむさぼるように食べたくなるのです。

 この日の昼、そんな条件の中でホテルオークラの中に入っている中華屋さんでまたまた妻と娘の分も食べてしまいました。今度はパスタよりもストレートに血糖値に反映される内容の食べ物で、そのために血糖値が220になってしまいました。糖質はどうも中毒になるようで、いったんどこかで堰が切れるとどんどん沢山食べるようになる、そんなメカニズムが体の中に埋め込まれているのかもしれません。つまり過食⇒血糖値急上昇⇒インスリンの大量分泌⇒血糖値の急激な低下⇒低血糖発作⇒過食という悪循環です。

 この日は夕食を余りお腹がすいていない状態で8時過ぎに食べ始めましたが、昼食後の血糖値が低下するさなかにわずかの糖質を食べても血糖値に影響がありませんでした。今回の実験を通して分かったことがいくつかあります。まず、食べ過ぎた後、空腹になった状態で通常量の食事をとると、その食事で一過性の高血糖のスパイクが見られること。そしてその後にインスリンの過量分泌によって引き起こされる低血糖が襲い掛かると言うことです。

 もう一つ、糖質中心の過食の程度如何ではインスリンの分泌が間に合わず、高血糖状態が長時間持続すると言うことです。血液中のブドウ糖の内の0.01%ほどが環状構造から直鎖構造に移行して存在します。その直鎖の一方はアルデヒド基です。炭素が5つついた直鎖にアルデヒド基がついたのがブドウ糖、炭素一つの構造にアルデヒド基がついたのはアセトアルデヒドと言ってお酒が代謝されて最初に出来るものです。炭素なしでアルデヒド基に水素が一つだけくっついた奴は猛毒のホルマリン。

 ホルマリンの毒性が弱くなったものがアセトアルデヒドで、お酒はホルマリン程ではないけど、毒性があります。そしてブドウ糖もホルマリン程ではないけど毒性があります。分子量がアセトアルデヒドと比べるとブドウ糖のほうがずっと大きいので、その毒物の作用する場所が異なってきます。ブドウ糖が細い血管に作用するのに対してアセトアルデヒドは血管からしみ出て脳の中に直接影響します。だから、毎日お酒を飲んでいると大脳皮質が萎縮します。そうするとちょっと頭をぶつけただけで慢性硬膜下血腫になる危険が増します。

 一方、お酒が入ると肝臓がブドウ糖を合成しなくなるので、飲酒後には血糖値が下がります。その下がり具合は人によりけりで、少しのお酒でよく下がる人がいる一方、沢山飲んでもあまり下がらない人もいます。前者に該当するひとは多分週5日ほどの控えめな飲酒で糖尿病のリスクを押さえ込む効果があると想像されます。そして控えめな(毎日日本酒にして0.5合程度)飲酒でお酒の毒性が体を攻撃するほどでもない、そういった呑み方をする人が長寿になるのだと思われます。

 お酒を取るが、長寿をとるかと言うことではありません。程々にすることでお酒を楽しみながら健康に長生きできるので、ぐでんぐでんに酔っ払うまでお酒を飲むと言う習慣からそろそろ抜け出した方がいいのではないでしょうか。ほっぺたがほんのり温かくなる程度でやめておく、ちょっと物足りないかもしれませんが、慣れればこれが一番だと思うようになるでしょう。