2014年7月27日日曜日

熱中症・予防と対策

このところ異常な高温のために熱中症があちこちで報告されています。そこで、このブログの《号外》として熱中症の原因とその対策を考えてみます。

熱中症は体温維持のため機能を発動することが出来なくなり、いわば万策尽きた状態です。体温が上昇すると、体はどのような反応をするのでしょうか。

頭の中に体温を調節する中枢があります。その体温中枢に初期設定された温度よりも高くなっているよ、と言う情報が届くと発汗量を調節して、蒸発熱によって体温を下げようとします。また皮膚表面に分布している毛細血管への血流を増やして、全身の皮膚がラジェーターのように作用します。

熱中症と言うのは、汗をかきたくても汗が出なくなったり、皮膚表面近くを走る毛細血管への血流が増えない、あるいは増えても外気温が体温よりだいぶ高いので体温を下げる役目を果たさない、と言った状態の事だと考えられます。

体温が上昇すると、赤血球がとても壊れやすくなり粘度が高くなるし、血液凝固系も重大な影響を受けます。また、代謝が更新し、体の各部分での酸素の要求量が増えるのに、 血液はその本来の機能を果たせなくなるので、体の各部分で酸欠が起き始めます。そうすると、血管内血液凝固と言う状態になり、そうなるとほぼ回復不可能です。

注意点としてはまず水分を十分取ること。血液内に含まれている各種イオンに組成が似たものは吸収性が良いなどと言われています。大量に汗をかくような仕事をしている人は塩分をちゃんととる必要がありますが、一般には麦茶などで十分対応できるはずです。ただし、ビールなど、暑くてのどが渇いていると、とてもおいしいものですが、これは脱水を引き起こすので熱中症の可能性があるときには、絶対に飲んではいけません。

一般に熱中症はかんかん照りの強烈な直射日光下で起こりやすいように考えられているようですが、どんより曇って湿度の高いときのほうが起こりやすいのです。多湿で汗が乾かないので、蒸発熱による体温低下が妨げられ、さらに大量の発汗を来たすからです。だから、扇風機やクーラーは躊躇わずに使う必要があります。

夜、エアコンの温度設定は28~29℃で充分です。エアコンをかけると空気が乾燥するので、29℃でも十分涼しく感じられるのです。エアコンは電気がもったいないという考えは改めるべきです。なんといっても、電気代より自分の命のほうが遥かに《もったいない》からです。

また、昼間畑仕事に行くのは控えてください。特に直射日光が強く、風があまり吹いていないようなときには、直射日光は凶器だと考えておいてください。また、最初に述べた体温調節の仕組みは高齢者になるほど、働き方が悪くなるので、お年を召した方は特に熱中症に気を付けてください。

熱中症になって病院に駆け込むより、予防する方がお金もかかりません。エアコンの使用頻度が増えたことによる電気代の増加よりも、病院での診療費と薬代のほうが高くつきます。新温泉町のあたりは深夜になるとずいぶん涼しくなるので、エアコンは午前2時ごろまで動くようにタイマーをセットしておけば充分です。

一方、近親者がどうも熱中症になりかけているようだと思ったらどうするか。おでこ、両脇、鼠蹊部(股のあたりで動脈の拍動を触れる部分)に布でくるんだ氷水の袋を置いて冷やしてください。直接冷たいものを皮膚にあてないこと。そしてその状態で受診してください。

くれぐれも無理をせずに熱中症を予防しましょう。

2014年7月24日木曜日

高血圧と塩分


 ほとんどの方が、いろんな局面で『塩を減らせ』と言うアドバイスを聞いていると思います。高血圧に塩分はよろしくないからです。ではなぜ塩分が高血圧に悪いのでしょうか。塩分が体内に高濃度に存在すると、当然血管内にも分布しますので、血管内の高濃度の塩分は外から水を引き込もうとします。水が血管内に引き込まれると血液の量が増えるのです。

その過程で血液のヘモグロビンが薄まると、それを感知した造血細胞の活動が活発になって、最終的には最初と同じ濃さの血液が増えることになります。血液が増えると、心臓に帰っていく血液が増え、当然心臓から出て行く血液も増えるので、血圧が上り始めるのです。血圧が上り始めると、それに対抗するために血管壁が丈夫になります。すると、丈夫になった血管壁の抵抗を跳ね返して血液を隅々まで送るために、さらに強力に血液を心臓から送り出すようになります。

塩と高血圧の関係には当然個人差があります。昔、黒人奴隷はもともとアフリカの内陸部からつれてこられることが多かったらしいのですが、塩が摂りにくい環境で体に必要なナトリウムを出来るだけ失わないように体が適応していた。それがアメリカに連れて行かれて、ふんだんに塩を摂取するようになったので、たちまち高血圧になったのです。日本人はアメリカの昔の黒人奴隷ほど塩に過敏に反応するわけではないのですが3割くらいの日本人は塩分摂取にかなり敏感に反応するようです。

それ以外の人はいくら塩分をとっても大丈夫かと言うと、そうではありません。『比較的』鈍感なだけで、やはり塩分を無思慮に摂取しているととても厄介な事態になるので、塩の摂取は必要最小限にしたほうがいいのです。そして塩味の濃さに関する好き嫌いは大部分慣れの問題で、塩分を少なくした料理にもすぐ慣れます。漬物をしょうゆ漬けにしている人はいませんか?焼き魚にしょうゆをかけている人はいませんか?

漬物には醤油を使わない事、焼き魚はレモンの絞り汁で食べましょう。その方がおしゃれだし、健康に良い。レモン農家の人もそれで助かる。他所の人を助ける必要は無い?だったらレモンを庭に植えましょう。最初の2年ほどは寒さ対策のために鉢植えにして、冬は屋内に入れるなどの必要があるようですが、立派な樹木になった後はかなりの寒さに耐えるようです。あまり虫もつかないので、手入れは楽です。私は最初の年からレモンを地植えして枯らしてしまいましたが…

2014年7月17日木曜日

植物を騙す-腎臓を患う人たちのために

 腎臓の悪い人は、腎臓から排出することの出来る分子が制限されるので、細胞膜の電気的な活動に重大な影響を与える元素などについて、体に蓄積すると具合の悪い物の含有量を減らした野菜ができればとても好都合です。一番都合の悪い元素は常識的に考えるとカリウムです。これが体内に過剰に蓄積すると心臓が止まるなど、とても不都合なことが起こります。ところがカリウムは植物の生育にとって無くてはならないもの、当然その結果植物にはカリウムがたくさん含まれます。

昔メンデレー エフと言う化学者が面白いことに気付きました。水素、ヘリウム、リチウム、と言う具合に原子量の順番に原始を並べていくと、一定の周期でとてもよく似た元素が現れるという事実です。塩素と一対一で結合すると言う性質のある元素は原子量の小さいものから順に水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムとなります。

植物の生育にとってカリウムは必須、そのカリウムを植物の成長する過程で化学的性質がとても似ているナトリウムやルビジウム、セシウムとすり変えたらどうなるか、植物は騙されて、ナトリウムやルビジウム、セシウムなどをカリウムと勘違いしてせっせと組織内に取り込んでいく。ですから、植物に投与する肥料を途中で燐酸カリウムから燐酸ナトリウムや燐酸セシウムに摩り替えると、植物はそのまま成長を続けるらしいのです。

 ルビジウムやセシウムが体内でどのように代謝されていくのか知りませんが、ナトリウムの代謝なら、その安全性も含めて、わかります。カリウムをナトリ ウムに置き換えると言う方法をとって、低カリウムの野菜を作ることができる、そういう野菜なら腎臓の悪い人たちも、健康な人と同じようにさまざまな野菜を美味しく食べることが出来るのではないか、こういった野菜を育てるには、栄養成分を厳密にコントロールできる水耕栽培がやりやすいでしょう。

 その様な実験の出来る環境が欲しいと切実に思っていますが、現段階では無いものねだり。効率はずっと落ちますが、手作業で少しずつ試していきたいと思っています。簡単に作れるようになったらまたここでご紹介しましょう。そうしたら、腎臓の悪い人が自分で低カリウム野菜を作ることができるようになる、そんな日がくるかもしれません。

2014年7月10日木曜日

*二つの「ペスト」-その2*



江戸時代から 明治にかけてのコレラ大流行でも死者の数は10万人前後。当時のわが国の人口が4000万人前後でしょうから、ヨーロッパでのペスト流行時の死亡率を当てはめると1300万人から2700万人ほどが死んでしまうことになり、大惨事などという言葉では表せません。ヨーロッパでのペストの猛威は多くの人が「世の終わり」を本気で予感した、それほどの死者を出したペストです。ヨーロッパではペストを忌み嫌い、何か不吉なこととペストを結びつけるような心のメカニズムが深層心理の中に今も生き続けているようです。


ところでダニエル・デフォーと言う物語作家をご存知ですか。ロビンソン・クルーソーの著者です。彼はペストの流行がまだ制御できなかった時代に生きていました。そしてロンドンでの大流行を経験します。そのときの記録(これまた「ペスト」と言うタイトルです)がドキュメンタリーなのか小説なのか分からないような体裁で出版されています。こちらはカミュのように実存主義的な思想性と無関係にデフォーが見聞きしたことをベースにして記録しています。ですから、カミュの「ペスト」とは一味違う。


どちらが優れているとか、そんなことを言うつもりはありません。全く異なるスタンスで書かれたものだからです。猖獗を極めると言う表現にはむしろデフォーの「ペスト」のほうがぴったりかもしれません。夏の夜は短いのですが、その短い夜に読み始めてもあっという間に読んでしまう、そんな力を持った作品です。私の専門外である小説の話になってしまいました。鳥インフルエンザが世界的な爆発的流行をきたしたら、これらの小説に描かれたような世界が出現するかもしれません。 


全くの余談ですが、江戸の町を恐怖のどん底に突き落としたコレラが今弱毒化しているとの話があります。コレラ菌の立場からすると感染してあっという間にホストを死に至らしめたら、次のホストを探すのが一苦労、ホストが長生きするほうが次のホストに乗り移るチャンスが増えるので、弱毒株のほうが厳しくなった環境を切り抜ける可能性が高くなるということらしい。コレラ菌にとって厳しい環境とは上下水道のことです。
 
家に帰ったら手を洗いましょう。トイレを清潔な状態に保ちましょう。そういった心がけが感染症の蔓延を防ぐのです。数年前にSARSがアジアで流行した時、わが国にはついに侵入しませんでした。日本人が、海外の人たちから見ると病的に清潔好きだということが一役買っていたのではないでしょうか。何しろ、SARSが流行したアジアの某国で「日本人はトイレの後いちいち手を洗うんだって。信じられない」と嗤っていたそうです。


2014年7月4日金曜日

*二つ の「ペスト」-その1*


前項でペストについて簡単に取り上げましたが、ペストと聞くと蚤が媒介する伝染病で、放置すると死亡率が とても高い伝染病を思い浮かべるのが一般的でしょう。日本でも流行したことがあったのです。明治の中ごろ、神戸にペストが持ち込まれ ます。それを水際で防いだのが北里柴三郎とその同僚たちでした。

ペストの蔓延を防ぐだけでなく、ペストの保菌者となるネズミが野生のネズミの中に紛れ込むのを阻止する必要があり、当時ネズミ一匹を5銭で買い上げることでネズミ社会へのペストの拡散を食い止めたのだ そうです。

 わが国には ネズミの天敵である猫を家に飼う風習があり(しかも魔女の生まれ変わりとして猫を焼き殺したりしなかった)、ペストを媒介する蚤(ケオプスネズミノミ)が生息に適しない環境だと言うこともあって、南の国のように定期的に小流行を繰り返すと言うことにはならなかったようですが、ほかの蚤でもこの病気を媒介できるので、ペストの侵入を食い止めたのは、本当に間一髪と言ったところでしょう。偉大な先輩たちの努力に感謝!しかし今日ここで取り上げるのは感染症としてのペストではありません。 

 若い頃に小 説を読みふけった方はご存知だと思いますが、カミュと言うフランスの小説家の作品に「ペスト」と言うのがあります。アルジェリアのとある町をペストが襲う。軍隊が町を包囲して感染している可能性のある人を町に閉じ込めてしまう。その町の中は閉鎖空間となって猖獗を極める。その中でさまざまな登場人物のドラマが展開すると言うもので、フィクションとは思えない、鳥肌が立つような小説です。カミュはこの小説の前に「異邦人」と言う小説を書いており、両者の作風の違いが議論の俎上に乗ったこともありました。

 わが国では ペストよりもコレラのほうが恐れられた病気でしょう。コレラは江戸時代に何度か江戸で流行しており、明治から大正時代になっても複数回の大流行を見ています。コレラの恐ろしい症状は「仁」と言う漫画で詳細に描かれていますので、ご存知の方もいるでしょう。しかし、ヨーロッパではペストがとても恐れられています。何しろ中世ヨーロッパの大流行の際に人口の1/ が死んだとか2/3が死んだと言われているのです。

 《次週に続く》