2014年12月4日木曜日

ジャンク・フードの弊害

 前回に引き続き、食について述べておきます。食事は人が生きて行くうえでとても大事なものです。とはいっても、私の言う文脈でとても大事になったのはごく最近のことで、ヒトがヒトになる途上にあっては別の意味でとても大事なものでした。今は栄養のバランスの取れたものを美味しく調理して云々と言う文脈で大事なのですが、昔は生き延びるためにエネルギー源を確保すると言う意味でとても大切なことでした。

 少なくとも今の日本では各家庭に電気釜、なべ、フライパンの類があるでしょうし、勿論包丁やまな板もあるに違いないはずです。たいていの家庭で、ご飯を炊き、味噌汁を作り、魚を焼き、漬物を刻んで食卓に出しますね。野菜サラダ、スープ、肉料理などという家庭もあるかもしれません。一方、ハンバーガーに代表される外食産業が隆盛を極め、働くヒトの労働賃金の分を差し引いても、家庭で作る料理にそれほど負けないコストで外食産業の食事を食べることが出来るようになっています。

 食材を大量に安く仕入れ、あとは暖めるだけと言う段階まで工場で加工し、それを各店舗に配送すると言う形をとることで、費用を安くすることが出来るようです。もしかすると、その様なファスト・フードだけで食事を済ませていると言う家庭がわが国にも出現し始めているかもしれません。そうなると、その家庭で育った子供は『お袋の味』なるものを知る機会がなくなり、味覚上の欠落は当然次の世代に受け継がれるようになってしまいます。先の記事で述べた米国型の食生活に近づいていくわけです。

 そのファスト・フードですが、炭水化物と油を大量に含み、とてもカロリーが高いのが一般的です。そういった食べ物ばかり食べているととても困った事態に陥ってしまう。そんな研究が報告されています。その研究内容をコピーします。

オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学の研究チームがマウスを使って行った結果で、研究者らは「頻繁に食べると、ジャンクフードがやめられなくなり、通常の食事を避けるようになるという”負の連鎖”に陥る」と注意を喚起している。

実験では、特定の音を聞くと砂糖水が与えられ、また別の音でチェリーやブドウが与えられることをマウスに学習させた。そしてヘルシーな餌で育てられたマウスは、チェリーやブドウの音に反応し、それらを好んで食べた。しかしそのヘルシー嗜好だったマウスに2週間ジャンクフードだけを与え、その後に同様の実験をしたところ、行動は前回とまったく逆だった。つまり、チェリーやブドウの音に反応しなくなっていたという。しかもショッキングなことに、ジャンクフード食をやめてヘルシー食に戻した後もしばらくは、砂糖水の方を好む傾向が続いたという。

つまり、ジャンクフードを食べると食の好みが変わり、ますますジャンクフードを求めるようになるのだという。研究を主導したマーガレット・モリス教授は「脳で起こるこうした反応は動物に共通するもので、今回の実験結果は人間にもあてはまる」と話す。ジャンクフードを食べれば食べるほど、ヘルシーな食事に見向きもしなくなる。現代が抱えている肥満増加問題の原因の一つといえそうだ。

 これに似た研究はカナダでもなされており、利益と効率を追い求めた結果としての外食産業が健康にとって重大な脅威になっているということを示しています。『お袋の味』と言うと家庭内での役割を固定化させるもので、あまりそういった表現は好ましくないと思うのですが、そういった味覚の根幹を形作るものが出来ないと、私たちはどんどんファスト・フード、ジャンク・フードへと押し流されていき、生活習慣病の底なし沼にはまってしまいます。

 女性だけが料理を担当すると、人生の晩年に奥様に先立たれたご主人はかなり悲惨なことになります。『世の男性たちよ、立ち上がって包丁を握れ』と言っておきます。家にいるときにはTVの前に居座ってビールを飲み、全く動かないと言うのでは健康上非常に具合が悪い。そうすることでほぼ確実に奥方より先に死ねる、と言う意味では望ましいのかもしれませんが。
 

 

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