だんだんお年を召してくると体のあちこちが自分のいうことを聞かなくなります。何らかの事故や負傷が元で体の一部が自分のいうことを聞かなくなると言うことも良くあることです。そして整形外科の外来を訪れる。X線写真やCTなどを撮影し、関節の様子を伺い、リハビリテーションが必要だとなることは一般的なケースです。リハビリテーションの処方箋を書いてもらい、機能回復訓練を受けることになります。
この機能回復訓練の所要時間は20~30分です。これを週3回程度行うわけですが、機能回復にはとても足りません。本当は毎日3~4時間以上トレーニングを行う必要がある、と言うケースが大部分だと思うのですが、ハリウッドのスターだったらともかく、我々庶民はトレーニングジムを自分のために作り、選任のトレーナーを雇って毎日血の滲むようなトレーニングを続けると言うことは出来ません。もっとも、そんなことが出来るような境遇にいる人はきっと我儘になっているでしょうから、トレーニングを受け付けないと思いますが。
ではリハビリの果たす役割は無いのか。その点を考えてみたいと思います。浜坂病院では、リハビリテーションのための部署が外来の診療科からもっとも離れたところにあります。リハビリの受付を済ませたらそこまで歩いていくことになるのですが、これが一つのリハビリになっているのです。機能回復訓練はある意味、自分の意思を試す場でもあるので、受付で『今からリハビリを受けるぞ』と言う決意を固め、数十メートルを歩いてトレーニングを受ける。そのことが大切だと思うのです。
一般的な傾向として、加齢に伴う筋力の低下が様々な運動機能障害にかぶってしまう高齢者の場合、どうしても体を動かすことが億劫になってしまい、わずかの機能障害が本来以上の運動機能を奪ってしまうようになります。そしてそれに立ち向かうには、絶対に障害に負けないと言う強い意思が必要です。リハビリはその場で肩や膝などの関節をよりたくさん動かすように訓練すると言う以前に、障害に負けない強い心を養うという重要な意味を持っているのです。
お年を召した方の障害は、運動機能制限とのせめぎ合いの要素を持っています。こちらが一歩引くとあちらが一歩進む。ですから、自分の努力できる範囲で、体を動かして、だんだん動きが渋くなっていく自分の体に鞭を当ててください。今年も元気に体を動かしつつ一年を過しましょう。
明けましておめでとうございます。
2015年元旦 公立浜坂病院長 五嶋良吉
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