2015年1月22日木曜日

病気と治癒


 生まれてから死ぬまでの間に人は何度も病気に罹ります。風邪、腸炎、扁桃炎、中耳炎、各種生活習慣病、癌、脳梗塞、心筋梗塞、COPD、肝炎、腎不全などなど、病気の種類をここに全部上げることは不可能です。そして、若い頃に罹る多くの病気は、何らかの医療上の介入をして、あるいは介入なしに、治って行きます。あるものはきれいに治ることなく、進行を遅らせると言った手段しか持ち合わせていませんし、急激に発症して手の打ちようのないものもあります。

 通常は治る病気でも、放置していて、ある一線を越えると病院に担ぎ込んでも手の打ちようのないものもあります。普通の風邪でも体が弱っているときに罹って、それを放置して攻撃因子のほうが体の抵抗力を打ち破ってしまった状況になると、医療上の介入によってそれを何とかこちらに引き戻すと言うのはほぼ不可能と言っていいでしょう。あるいは、多くの生活習慣病は、ある意味『マッチポンプ』のような状態になっています。

 甘いものを食べてはいけないと言われていてもどうしても甘いものに手が伸びてしまう、その結果摂取した糖が血流に乗って体中に運ばれ、糖毒性のために微細な血管や神経などが破壊されていく状態が起こりますが、その病の進行過程ではほとんど自覚症状がないので、カロリーの摂り過ぎ、糖質の摂り過ぎがよくないと言っても馬耳東風の状態が珍しくありません。そしていよいよ深刻な症状を本人が自覚する頃には、もう治癒する可能性はなくなっているのです。

 そのことが必ずしも良くないことかどうか、それは私に判断できません。各人がその時点での欲求を満たすことと将来の健康を秤にかけたときに、どちらをとるか、それは各人の人生観に委ねられるからです。ただ、将来の慢性疾患の苦痛は、それを経験していないと過小評価してしまいます。それ自体は責められることではありません。将来の経験したこともない苦痛に対して、人は想像力豊かになれないのです。ですから、これはこどもの時分に望ましい生活習慣を身につけさせておく必要があると言う気がします。

 糖尿病になって、足の一部が黒く変色し、体の節々が痛い。そんな状態になって病院に駆け込んで、健康になって退院したいと思っても、それは不可能。病院で出来ることは壊死がそれ以上広がらないように切断してしまうこと、しばらく様子を見ていてさらに追加切断と言うこともあります。肺癌になって肺を切除すると、切除前より肺活量が減り、歩行などの運動負荷に対して弱くなります。しかも手術に必要な入院期間中の筋力低下のために、運動負荷へのしんどさは倍増するのです。

 では、どんな生活をしたらそうした病気にならないか。どんな人でも必ず体の各臓器がへたって行きます。それはどんなに大事に乗っていても自動車が走行距離に応じて傷んでくるのと似ています。体の各臓器がさびてくるのです。ですから私たちは出来るだけ、臓器の傷みが来るのを遅らせるように気をつけるしかありません。具体的にはタバコを吸わない、酒を飲まない、野菜から先に食べる、ゆっくり食べる、食べ過ぎない、極端な味付けのものを食べない、妙なものを食べない、熱い状態のものを食べない、間食をしない、早寝早起きをする、熱いお風呂に入らない、毎日適度な有酸素運動をする、ストレスを持ち越さない、などなど、思いつくままにあげてみました。

 そんな生活はつまらない、そう思う方が多いのではないかと思います。普段の生活では、将来の苦痛よりも現在の楽しみを選ぶ、そういう人がその生活のせいで病気になったら、ある程度覚悟を決めて、凛々しく病気に向き合って頂きたいと思います。どう足掻いても、結局体を病気以前の状態に戻すことは出来ないのです。そして、その病気が発症するまで体をいたぶり続けたのは自分自身なのですから。

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