2015年2月20日金曜日

糖尿病:この厄介な病気


 糖尿病は現代の日本でとてもポピュラーな病気です。この40年間にわが国は高度成長を遂げましたが、経済成長率をはるかに凌駕して糖尿病患者数が激増しました。40年前の約3万人から近年700万人程度にまで増加しており、境界型糖尿病(糖尿病予備軍)を含めると2000万人に及ぶとも言われています。

 糖尿病はもちろん高血糖そのものによる症状を起こします(のどの渇きや多尿など)。しかし大きな問題になるのは糖毒性によるものです。罹病期間が長期にわたると血液中の高濃度グルコースの一部(0.1%前後だったと思います)が直鎖型になり、その直鎖グルコースの一方の端にあるアルデヒド基(ホルマリンのようなもの)の反応性の高さのため血管内皮のタンパク質と結合(これを糖化反応といいます)し、体中の微小血管が徐々に破壊されていき、目、腎臓を含む体中の様々な臓器に重大な障害(糖尿病性神経障害・糖尿病性網膜症・糖尿病性腎症)を及ぼすのです。

 さらに インスリンは、栄養素の同化を促進し、筋肉、脂肪組織、肝臓に取り込みます。ところが、細胞内にブドウ糖を取り込んでも、それを利用することが出来ませんので、浸透圧で細胞が膨れてきます。血管が膨れると血管の内腔が狭くなり、そのために高血圧になりやすくなります。このように糖尿病は万病の元、なんとしても回避する必要があるのです。ところが、一方でこの病気はその初期に何の自覚症状も出現しません。

 もともと食べるのが大好きで、どうしても過食になってしまう人がⅡ型糖尿病になりがちと言う傾向があります。健診などで『境界型の糖尿病です』などと指摘されても、自覚症状がないために、あまり気に留めずに食べたいものを食べたいだけ食べるという生活を続けることが多いのです。その結果、だんだん顔色が悪くなり、むくみがひどくなり、とても日々の活動が辛くなる、病院を受診したところ透析が必要だと言われてしまう、などということが起こります。

 その時点で、糖尿病の重大な合併症である微小血管障害が発生してしまっています。その障害を受けた血管は元に戻すことが出来ません。糖尿病は血糖値が急に上昇するような食生活を続けることで、インスリン分泌細胞が能力以上に働かされて、インスリンを大量に作るようになるところから始まります。インスリンは栄養素を同化して体内に取り込むので、二重の意味で太ります。栄養過多による体重増加とインスリンによる肥満です。肥満すると体のインスリン抵抗性が増します(インスリンが効き難くなる)ので、膵臓にかかる負担はますますきつくなります。

 食べてからワン・クッション置いてインスリンが大量に分泌され、かなり高くなった血糖値がいきなり下がる、そうすると栄養は充分行き届いているのに空腹を感じて甘いものを欲するようになる、そこでおやつなどを食べてしまう、さらに太るという何重もの悪循環に陥ります。ますます太り、インスリンの要求量がさらに増加し、体内のインスリン生産工場が疲弊して部分的な操業停止に追い込まれます。細胞は必ずしもそうした過重労働に対してすべてが同じレベルでダウンするわけではないからです。

 つまり食後にインスリンの出が悪くなり、食後高血糖の度合いがひどくなる。こうして全身の状態がどんどん悪くなる。これが糖尿病です。こうなる前、インスリンがまだ正常に作られているときに生活習慣を改めると、糖尿病の進行をストップすることが出来るのではないかと私は考えています。ではいかにして悪しき食生活習慣を改めるか。賛否両論がありますが、私は糖質制限ダイエットが最も理に適っていると考えています。その理由は二つ。一つ目は栄養士さんが勧める糖尿病食よりも自制心が少なくて済むという点です。

 私は経験のためにある病院の糖尿病食を食べてみたことがあります。一言でその味を表すと『まずい』ということになります。甘辛、というのはわれわれが慣れ親しんだ調味の基本です。それがいずれも使えない。だから我々の味覚からすれば美味しいと感じることが出来なくなります。それに分量が少なく、満腹できない。もっとも、美味しくない食事だから分量も少なくてちょうどいいのだろうなどと勘繰りたくなりますが、分量の少なさも絶望的です。つまり、味の上からも量の上からも満足できない。

 それに対して糖質制限食はまず野菜を食べる。特に根菜とかかぼちゃなど、でんぷんをたくさん含むものを減らして葉っぱ物を食べます。加熱調理したものならおひたし、生野菜も大いに結構。たくさん食べてください。ドレッシングはレモン汁とオリーブ油、少量の塩分を生野菜の上にかけるのが一番簡単です。次に豆腐、魚、肉などのたんぱく質。これもたらふく食べて結構です。そうした食事の合間にチーズ、ヨーグルトなどを食べましょう。そしてご飯、これは少量です。しかしそれまでに充分満腹していると思いますので、最後の締めはあっさりと、です。

 理由の二つ目は安全だということ。極端なデンプン質の制限はいけません。120g以下というのを提唱している人もいますが、これはやめてください。ご飯は一食で1/4合ほど。これだと13食で糖質の摂取量が120gほどになり、程よいところです。固ゆでのゆで卵ダイエットなど単一の食べ物を食べて痩せるというのがありましたが、薦められません。栄養のバランスが悪いのです。絶食、これは普通の人が数日間とかだったら危険はないと思いますが、その後の食の解禁日に気をつけてください。消化管の上皮細胞が大部分剥奪してしまっているのでいきなり食べると危険です。

 糖尿病が進むと、心筋梗塞などで急死するか、透析を受けながら何かと不便な生活を送るか、眼が見えないようになって不自由するか、足が腐ってきて追加切断を繰り返すか、あるいは急死以外のいくつか上述の症状が重なるか、決して明るい未来はありません。日常生活を送る上でも様々な制約が課せられるようになります。糖尿病予備軍の方はいうに及ばず、ちょっと太り気味の方も、栄養のとり方を考えてください。

0 件のコメント:

コメントを投稿