2015年4月6日月曜日

禁煙の勧め

 私が20前後の頃、本邦での喫煙率は60%を超えていたと記憶しています。先日、禁煙について資料に当たっていたら、今の喫煙率は21.6%だそうです。タバコを習慣的に吸う人は5人に1人といったところまで、喫煙者数が減ってきています。何でもそうですが、ある集団の構成員数が減ると、その集団は先鋭化する。喫煙者の集団の構成員数が減ったからといって、どう先鋭化するのかといわれても困るのですが、慢性閉塞性肺疾患の患者数は増加しているようです。

 この厄介な病気はCOPDとの略称が一般的になってきていて、多くの人がCOPDといったほうが話が通じやすいという状態になっているかもしれません。原因はタバコ、そのほかにも上気道をいたぶる様な刺激性のある微細な粉末や気体を慢性的に吸入することです。一般に気道は口や鼻から始まって、のどの奥、声帯、そして気管へと続きます。気管から気管支、細気管支へと枝分かれしていき、最後には肺胞に至ります。

その肺胞までの気道系は繊毛上皮に覆われていますが、その上皮細胞の一部の場所が杯細胞という別の細胞に入れ替わっています。杯細胞からは粘り気の強い液が分泌され、繊毛上皮の繊毛によってそれが全面に広げられます。そしてその上皮に備え付けの動くひげで上へ上へと押し上げられていき、声帯の直下まで来ると、喉がくすぐったくなって咳き込む。そのねばねばした液が痰として喀出されるという段取りになっております。気道を通った空気の中に含まれる様々な好ましくない物質がそのねばねばに絡めとられて、痰となって体外に排出されるのです。

長年タバコを吸っていると、先に述べた繊毛上皮が部分的に麻痺していきます。タバコの煙が一番強く当たるところから順を追って麻痺していくのですが、そのことで杯細胞で分泌された液体が引っかかってしまいます。しかし末梢のほうからは次から次へと分泌物が上ってきます。ある箇所でストップしてしまうと、その部分が詰まってしまいます。肺のあちこちで小さな部分が詰まり、その割合がある程度大きくなると息苦しさを覚えるようになります。

繊毛上皮は本来の仕事を果たさなくなるだけでなく、細胞そのものが扁平上皮へと変化してしまいます。これを扁平上皮化生といいますが、これは一種の腫瘍ですね。ある人は、細気管支の閉塞が進んでいき、日常動作に制限が加わるようになります。そして在宅で酸素を吸っていても息苦しさが直らなくなっていく。この状態をCOPDといいます。ある人は扁平上皮化生から扁平上皮癌へと進んでいきます。COPDの患者さんは肺がんになった人を羨ましく思うといいます。それほど苦しいのです。

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