2015年9月2日水曜日

坐骨神経痛-1

 坐骨神経痛とは一般に良く聞く名前で、かなりポピュラーなものですが、これは一群の症状についた名前であり、病名ではありません。坐骨神経は末梢神経のなかで最も太く長い神経です。第4、5腰神経と第1~3仙骨神経からなり、梨状筋の下を通って大腿後面を下行し、膝の裏で総腓骨神経と脛骨神経に分かれます。神経が腰椎の隙間から出て骨盤をくぐり抜け、お尻の筋肉から顔を出す間のどこかで、圧迫を受けた結果として発症するのが坐骨神経痛です。

 年齢により異なりますが、若い人の場合最も多いのは、腰椎椎間板ヘルニア、次に梨状筋症候群が挙げられます。腰椎椎間板ヘルニアは比較的急激に発症し、仰向けの状態で下肢を伸展挙上すると坐骨神経痛が増強する(これをラセーグ徴候といいます)のが特徴的です。ほとんどの場合、片側の坐骨神経痛が出現しますが、ヘルニアの位置や大きさにより両側に見られることもあります。梨状筋症候群は比較的緩徐に発生し、通常はラセーグ徴候が陰性となります。梨状筋間で坐骨神経が絞扼され、仕事や運動でストレスが加わり発症することが多いようです。

 一方、高齢者では変形性腰椎症や腰部脊柱管狭窄症などの変形疾患に多く見られ、また帯状疱疹により坐骨神経痛を発症する場合もあります。その他、年齢に関係なく特殊な疾患として、脊髄腫瘍や骨盤内腫瘍などが挙げられます。こういった腫瘍性の病変で坐骨神経痛を発症する場合は、痛みが非常に強く、保存的治療で治りにくいのが特徴です。

 原因疾患に関わらず、まずは症状を緩和する対症療法が主体です。日常生活の指導→薬物療法→理学治療→ブロック注射の順で治療を進め、それでも痛みが軽減しない場合や歩行障害、麻痺といった他の神経症状を合併する場合に手術が行われます。急激に発症する腰椎椎間板ヘルニアの場合、まずは安静が原則です。高齢者の変形性腰椎症や腰部脊柱管狭窄症などの場合、必ずしも安静が必要とは言えませんが、下位腰椎にかかる重荷を減らす目的で、長時間の座位姿勢を避けたり、コルセットを装着することも有用です。

 非ステロイド性消炎鎮痛剤の内服薬や坐薬が主に用いられます。比較的長期間投与される場合が多いため、胃腸障害などの副作用に注意しながら使用します。また、腰脊柱管狭窄症では神経組織内での血流障害が原因の一つと考えられており、循環改善を目的としてプロスタグランディン(PG)製剤の内服や注射も用いられます。温熱治療としてホットパックや極超短波などが用いられます。腰痛を合併する場合に牽引療法もよく用いられていますが、治療期間を短縮するほどの効果が有るとは言えません。しかし、リラクゼーションという立場からも疼痛を軽減させる一つの手段であると考えて良いと思います。

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