2015年10月27日火曜日

帯状疱疹後神経痛と治療-2


 帯状疱疹は60歳代を中心に50歳代〜70歳代に多くみられるのですが、過労やストレスが引き金で若い人に発症することもあります。年齢が若いから軽症で済むとはかぎらず、その患者の抵抗力により重症度が決定されます。初期に軽症であっても、無理をすることでいくらでも重症化する疾患なので、要注意です。ごく稀に、骨髄移植に伴いドナーが保有していた病原体により移植後に発症する事が報告されています。

知覚神経の走行に一致して帯状に赤い発疹と小水疱が出現し、強い神経痛様疼痛を伴います。前兆としてだいたい1週間くらい前から違和感やぴりぴりした痛みを感じることもあります。三叉神経に帯状疱疹ができたときは注意が必要です。髄膜炎、脳炎にいたるおそれもあります。目の中にできると角膜炎や結膜炎を併発し失明に至ることもあります。また、まれに歯槽骨の壊死・歯の脱落が発生することもあります。

なお、歯槽骨以外の骨の壊死の報告はありません。耳の中にできると耳鳴り・眩暈などの後遺症を残すこともあり、顔面神経に帯状疱疹ができることがあり、顔面神経麻痺(ラムゼイ・ハント症候群)にいたることがあります。腰部や下腹部に生じた場合、排尿障害や排泄障害が生じることもあります。まれに、神経痛のみで発疹が出ないという病態があります。2週間以上治癒しない場合、免疫機能の異常が考えられます。

通常、皮膚症状が治まると痛みも消えますが、その後もピリピリとした痛みが継続する(=帯状疱疹後神経痛)ことがあります。これは急性期の炎症によって神経に強い損傷が生じたことで起きるのです。 急性期の痛みは皮膚の炎症や神経の炎症を原因としますが、帯状疱疹後神経痛は神経の損傷によるものなので、痛みが残った場合は専門的な治療が必要になる場合があります。 なお、この症状は、高齢者、皮膚症状が重症な人、または眠れないほどの痛みがある人に残る可能性がありますので、早期の治療が望まれます。

帯状疱疹はどういう形で何が出るかも不明ということもあり、早めの兆候を見逃さず、症状を過小評価しないことが大切です。特に顔面神経麻痺などは湿疹が消えても治療が遅れるとなかなか治癒しないこともあります。顔もしくは体にひどく痛い皮膚症状がでたら皮膚科に行くこと、また耳鼻科領域で顔面神経麻痺などが出たら、すみやかに治療に専念すべきでしょう。

臨床症状で一般に判断できますが、時に虫刺され、接触皮膚炎、単純ヘルペス、ジベルばら色粃糠疹、自家感作性皮膚炎、乾癬などの疾患と紛らわしいことがあります。血清診断では補体結合反応が一般的で、ペア血清で血清抗体価の上昇が診断の一助となります。皮疹の出現した日を第1病日とすると帯状疱疹では第45病日あたりから抗体価の上昇がみられます。ちょっと馴染みのないお話になってしまいました。次回はあと少し実用的なお話をする予定です。

2015年10月20日火曜日

職場同好会のハイキングと高原サミットのプレイベント


 1017日の土曜日に『秘境』に行って来ました。職場の仲間たち9名と一行の一人のお孫さんの合計10名でした。その秘境とは霧ヶ滝。落差70mのほぼ垂直の滝で、下の方では水が霧状になっていて、そのために滝つぼがないという状態です。林道から2.5kmほどのところにありますが、京阪神の山と異なり、随分自然に近い状態で、歩き難いと感じる人が多いのではないかと思います。このあたりは鳥取県との境界に近く、少し足を伸ばせば、鳥取県の雨滝とか筥滝までいけます。こちらのほうは駐車場から徒歩数分でたどり着くので、とても気軽に行けます。





 










 霧ヶ滝は2.5kmほどの距離があり、熊が出そうなことや、滑落して怪我をするとそのままこの季節だったら凍死してしまう危険性もあり、単独行動は慎むべきでしょう。滝に至るまでの道は歩いていて楽しいものです。お隣の県にある雨滝も落差が40mほどあり、水量が多いので迫力満点なのですが、私の個人的な意見を言わせてもらえば、霧ヶ滝のほうが風格が上だという気がします。その辺りは好みの問題もあるので、絶対にそうだとは申しませんが。かなり奥まったところにあり、人に知られていないのはちょっと残念です。往復5kmほどの距離をゆっくり歩いて4時間、ハイキングが終わったら林道を数分(車で)上流に走ると霧滝ヤマメ茶屋という食事処が出現します。


 深い山奥に建設資材を搬入するだけでも大変だっただろうと思うのですが天井の高い建物がそびえています。ここでは岩魚やヤマメを中心としたメニューを楽しめます。メニューは一種類だけで1800円、かなりリッチな食事です。季節ごとに内容は少し変わるようですが、岩魚の塩焼き、岩魚の刺身、ヤマメの天ぷら、吸い物、山菜等の天ぷらEtcとなります。美味しい食事を楽しんでいると、登山の疲れも癒されてきます。この茶屋は前もって電話予約しておかないと、食べ物にありつけません。連絡先は0796-92-2692(小椋さん)です。本来岩魚、ヤマメの養殖を行っているところで,食事はその方たちの好意で提供するもので、要求がある時のみオープンしています。
 







 







  18日には上山高原でイベントがありました。来年の秋に全国草原サミットを上山高原で開催すると言うのでプレ・イベントが行われました。狭い道路で蛇行しており前方視界が良好とはいえませんので、正面衝突などを避けようと思ったら、前方から対向車が来ることを前提としながら運転する必要があります。18日は好天に恵まれ、日差しが強くて肌の露出部が焼けました。餅つき大会などのイベントが用意されており、岡本町長の力のこもった杵使いで『若い者に負けんぞ』と言う声が聞こえてきそうでした。






2015年10月13日火曜日

帯状疱疹後神経痛と治療-1


 「1年の中で特に起こりやすいという時期はない」とされていましたが、宮崎県内の医療機関が19972006年に行った5万人近い大規模な集団に対する調査では、8月に多く冬は少なく、帯状疱疹と水痘の流行は逆の関係にあることが分かりました。この現象は、10年間毎年観測されたとしています。この調査とは別に、年齢的に水痘患者数の多い小児との接触の機会の多い、幼稚園や保育園の従事者には帯状疱疹の患者数が少ないことも明らかになっています。

 どうやらウイルスとの接触で免疫価が高くなり帯状疱疹が発症し難くなっていることがその理由のようです。 一般的には、体調を崩しやすい季節の変わり目に多く、基本的には一生に1回であることが多いのですが、2回以上罹患する人もいます(発症部位は異なることが多い)。再発するのは5%以下。ただし、全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病や後天性免疫不全症候群(AIDS)、骨髄疾患や免疫抑制薬などで免疫機能が低下していると短期間に何回も繰り返します。

 帯状疱疹の活性化時期には体液中に水痘ウイルスが存在する可能性があり、口腔内から検出されることもあります。また皮膚と皮膚の接触感染は勿論、体液感染や飛沫感染、物品を介しての伝染の可能性も否定できません。妊娠中に帯状疱疹を発症しても非妊娠時と経過は変わらず先天奇形は起こらないと云われていますが、帯状疱疹は胎児に感染するので、産婦人科での診察が必要でしょう。高齢者の場合、神経痛が強く残ることがあります。それを疱疹後神経痛、帯状疱疹後神経痛といいます。

 帯状疱疹としてではなく水痘として感染します。飛沫感染ではなく接触性の感染で、水疱の中に存在する水痘・帯状疱疹ウイルスが気管・気管支の中で増殖して水痘となります。発病した子供を抱くなどした場合、感染の恐れがあります。一度水痘になると、たとえ治癒しても水痘のウイルスが神経節中に潜伏している状態(潜伏感染)が続きます。ストレスや心労、老齢、抗がん剤治療・日光等の刺激などにより免疫力が低下すると、ウイルスが神経細胞を取り囲んでいるサテライト細胞の中で再度増殖する(再活性化する)ことがあり、この増殖によって生じるのが帯状疱疹です。

2015年10月5日月曜日

坐骨神経痛-2


 しばらくこのブログに手をつけていませんでした。気分的にとても忙しく、坐骨神経痛に関して、その続きを書いていく気力が沸き起こらなかったのです。言い訳はこの位にしておいて…腰部硬膜外ブロックと仙骨部硬膜外ブロックがありますが、外来では手技が容易で安全性が高い為に仙骨部硬膜外ブロックがよく用いられます。下位腰椎の疾患による腰痛や坐骨神経痛に効果が有りますが、薬剤が病変部に到達せず無効な場合も見られます。

 また、麻酔科以外の先生がこのブロックを行うときに、皮下に痛み止めの局所麻酔薬を予備的に注射すると言うことをせず、いきなり比較的太い針を突っ込む事が多いので、とても痛い経験をした方も少なくないようですが、麻酔科でこの手技を学んだ人たちであれば痛み止めをするはずです。痛みを訴えてやってきている患者さんにぎょっとするような痛みを加えるのは、同業者として余り感心できません。その際にはぜひとも麻酔科でこの手技を受けてください。腰部硬膜外ブロックでは、手技が難しいことに加えて、ブロック注射のあと2時間ほど臥床を強いられるので一般的ではないのですが、仙骨ブロックよりも効果的です。

 腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症の坐骨神経痛に対しても最も即効性のあるブロックが選択的神経根ブロックです。ブロック直後はほとんどの場合疼痛が消滅しますが、穿刺時の痛みが強く、神経根損傷の可能性も有るため、漫然と何回も施行することはありません。坐骨神経ブロックは梨状筋症候群、帯状疱疹後神経痛などに対して用いられます。外来で容易に施行できますが、硬膜外ブロックや神経根ブロックに比べると穿刺部位の目印がはっきりせず、また坐骨神経痛の走行に個人差も有ることから、確実な効果を得ることはやや困難です。

 神経の圧迫がある程度の期間に及ぶと、その除圧を目的として手術を選択することもあるのですが、手術は症状の進行を食い止めるといった目的でなされると思っておいてください。死んでしまった神経は再生しないのです。しかし、手術を受ける人は、治療への過度の期待から、結果に不満を持つこともまれではありません。治療前に整形外科医から詳細な説明がなされていると思うのですが、期待が大きいと手術のデメリットや合併症への言及を聞き落としてしまうと言うことはありがちです。

 大昔、我々のご先祖が竪穴式住居などに住んでいて、トラや狼の脅威に曝されていた頃は、筋肉が老化・萎縮して腰椎辷り症を引き起こしたり、腰椎前が神経根を圧迫して腰痛を発生させるといった事態になる前にこの世とおさらばしていたので、腰痛が問題になることは無かっただろうと思います。腰痛や坐骨神経痛は、言わば現代医療と生活の質の向上の副産物だとも言えるのです。腰椎の前彎が起こらないように腹筋を鍛えたり、骨粗鬆症にならないように食生活等の生活改善で対抗するのがもっとも理に適った方法かもしれません。