2015年10月5日月曜日

坐骨神経痛-2


 しばらくこのブログに手をつけていませんでした。気分的にとても忙しく、坐骨神経痛に関して、その続きを書いていく気力が沸き起こらなかったのです。言い訳はこの位にしておいて…腰部硬膜外ブロックと仙骨部硬膜外ブロックがありますが、外来では手技が容易で安全性が高い為に仙骨部硬膜外ブロックがよく用いられます。下位腰椎の疾患による腰痛や坐骨神経痛に効果が有りますが、薬剤が病変部に到達せず無効な場合も見られます。

 また、麻酔科以外の先生がこのブロックを行うときに、皮下に痛み止めの局所麻酔薬を予備的に注射すると言うことをせず、いきなり比較的太い針を突っ込む事が多いので、とても痛い経験をした方も少なくないようですが、麻酔科でこの手技を学んだ人たちであれば痛み止めをするはずです。痛みを訴えてやってきている患者さんにぎょっとするような痛みを加えるのは、同業者として余り感心できません。その際にはぜひとも麻酔科でこの手技を受けてください。腰部硬膜外ブロックでは、手技が難しいことに加えて、ブロック注射のあと2時間ほど臥床を強いられるので一般的ではないのですが、仙骨ブロックよりも効果的です。

 腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症の坐骨神経痛に対しても最も即効性のあるブロックが選択的神経根ブロックです。ブロック直後はほとんどの場合疼痛が消滅しますが、穿刺時の痛みが強く、神経根損傷の可能性も有るため、漫然と何回も施行することはありません。坐骨神経ブロックは梨状筋症候群、帯状疱疹後神経痛などに対して用いられます。外来で容易に施行できますが、硬膜外ブロックや神経根ブロックに比べると穿刺部位の目印がはっきりせず、また坐骨神経痛の走行に個人差も有ることから、確実な効果を得ることはやや困難です。

 神経の圧迫がある程度の期間に及ぶと、その除圧を目的として手術を選択することもあるのですが、手術は症状の進行を食い止めるといった目的でなされると思っておいてください。死んでしまった神経は再生しないのです。しかし、手術を受ける人は、治療への過度の期待から、結果に不満を持つこともまれではありません。治療前に整形外科医から詳細な説明がなされていると思うのですが、期待が大きいと手術のデメリットや合併症への言及を聞き落としてしまうと言うことはありがちです。

 大昔、我々のご先祖が竪穴式住居などに住んでいて、トラや狼の脅威に曝されていた頃は、筋肉が老化・萎縮して腰椎辷り症を引き起こしたり、腰椎前が神経根を圧迫して腰痛を発生させるといった事態になる前にこの世とおさらばしていたので、腰痛が問題になることは無かっただろうと思います。腰痛や坐骨神経痛は、言わば現代医療と生活の質の向上の副産物だとも言えるのです。腰椎の前彎が起こらないように腹筋を鍛えたり、骨粗鬆症にならないように食生活等の生活改善で対抗するのがもっとも理に適った方法かもしれません。


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