2015年12月9日水曜日

虚血性心疾患:狭心症と心筋梗塞 – その2


 食べたものが吸収されて血流に乗ると、余剰の成分がいろんなところに取り込まれるのですが、そこに別の要素が加わると、血管内にその余分な成分が蓄積しやすくなります。別の要素とは、大体ご想像のとおりだと思いますが、飲酒、喫煙、運動不足、糖尿病などの生活習慣病、ストレス、睡眠不足、偏った食習慣、そして本人に全く責任のない遺伝的素因などです。ストレスだって本人に責任はない?しかし数十年も日本の社会で生きているのですから、ある程度のストレス発散・回避の術は身につけておくべきではないでしょうか。

 体を走り回っている血液の通路たる血管にほころびが生じた場合、道路工事の作業員のような役割を果たすものが出てきてそこを何とかする、という都合のいい話はありません。血流障害が少しずつ進行した場合には、一応道路工事のバイパスに当たる血管のバイパスが出来ます。最も有名なものは『メドゥーサの頭』と言われるもので、肝硬変になって肝臓の血流が著しく悪化すると、本来肝臓を通って消化吸収されたものの一時処理をする部分をバイパスして腹壁の静脈に血流が逃げます。そして心臓に還っていく。その人の上半身を診ると、腹壁をまるでメドゥーサの頭のように血管が蛇行しているのが観察されます。

心臓の筋肉の間を縫って走る冠動脈にも、もし動脈硬化性病変で狭窄が出来た場合、それがゆっくり出来ていく場合だと、血流の不足した部分にそのバイパスが出来ていきますので、その状態で狭窄の程度がひどくなっても心筋の酸素要求量は、安静にしている限りそのバイパスで賄えます。しかし急ごしらえのバイパスでは、酸素要求量に合わせて血流を調節する機能が不十分であり、激しい運動などに晒されると心筋の酸素要求量が大幅に不足します。

 酸素が不足すると、一般的には狭心症と言われる症状が発生します。つまり胸がやたら痛くなる。胸から背中にかけての放散痛だったり、みぞおちの辺りが痛んだりと、痛みの場所は一定しませんが、かなり辛い痛み(自分自身の経験がないので、痛みの性状などを自分の言葉で書くことが出来ません)のようです。その狭心痛には亜硝酸剤が良く効きます。この服用なしでも痛みは多くの場合10分かそこらで治まります。

  次回は虚血性心疾患の治療に触れたいと思います。

0 件のコメント:

コメントを投稿