2016年1月19日火曜日

虚血性心疾患:狭心症と心筋梗塞 – その4

心臓の手術は、現在安全に行えるようになってきたとは言うものの、施設によってその成績には大きな開きがあるので、時間的ゆとりがあるのであれば、充分施設について検討した上で手術を決めたいものです。その場合の見分け方をいくつか挙げておきます。まずその施設の年間手術数と成績です。冠動脈バイパスだけでどれだけの数をこなしているかと言うのはかなり重要なファクターです。一般に心臓の手術と言っても、大動脈関係の手術か冠動脈の手術かで手技が大きく異なりますし、弁疾患に対する手術もまた性格の違ったものです。

 ですから、ごちゃ混ぜにして『うちは年間160例』と言われてもあまり参考になりません。『冠動脈バイパス術で年間80例』と言う情報が欲しいわけです。だからまずその数値を明確に上げること、そしてその80例のうち何例が歩いて退院したかを聞くことが大事です。一般に術後30日を越えた後に死亡してもその死亡例を手術死に勘定しないのが普通で、施設によっては死亡率をはじき出す際の『見栄』のためになんとしても30日は生かしておくと言うところもあります。それに、寝たきり退院では手術してもらった甲斐がないので、自分の足で歩いて退院したということはかなり重要です。

 もちろん手術する際の基準として、状態のいいものだけを選ぶと言うことも施設によってはあると思いますが、状態のいい心臓だけを手術の対象にする、つまり手術しても余り回復の見込みのないものは手術しない、と言うのも一つの見識ですので、そこで自分が手術対象に選ばれたのであればそれはそれで喜ばしいことです。また手術死亡率について、全国平均を持ち出して、自施設の成績を言いたがらない場合は要注意です。そういう場合には自施設の成績はたいてい平均より悪い。そして全国平均については多分ネットで検索して予備知識として把握できると思いますので、全国平均を実際より高めに言う施設に出会ったら、それも要注意です。

 もう一つ手術(麻酔も含めた)の所要時間を聞いておくことも大事です。平均の冠動脈バイパス本数と所要時間、その所要時間については心臓操作にかかった時間と全手術時間、そして麻酔の所要時間を聞いておくべきでしょう。それらの数値がすらりと出てこない施設であれば、一応用心したほうがいい。ただし、そうした平均値については電カルでの資料集めから数値の計算に30分から1時間程度が必要ですので、面談のときに次回はそれらについて教えて欲しい旨伝えておくべきでしょう。

 もし、医療関係の知り合いがいるのであれば、その知人に問い合わせるのも有力な情報を得る手段となります。その人が麻酔科の医師であれば、ある程度広い範囲について比較して教えてもらえるかもしれません。外科医であれば、自分もその当事者になるので、余り明快な答えが返ってこない可能性もありますので…一つしかない自分の命ですので、手術に関しては慎重に病院を選びたいものです。その際、近場だとか、受付や主治医が優しかったり愛想がよかったりと言うのは一応参考程度に留めておいてください。

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