2016年9月23日金曜日

運動と糖尿病


 私たちが子供だった頃、TVのある家庭は村に一見とかいう環境で、もちろんファミコンやゲームボーイなどその痕跡もありませんでした。ですから子供達の遊びは専ら戸外で走り回ることでした。女の子たちはあまりそういった走り回ることがメインとなる遊びには加わらず、男の子たちだけでチャンバラとかプロレスごっこなどに打ち興じていました。当時食糧事情が理想的とは言えず、いつもおなかをすかしていたのですが、それでも走り回って余計空腹になるようなことをしていたのです。ですからそれなりに体力はあったと思います。

 もちろん上位5%の子供達の体力は比べるまでもなく現代の子供達のほうが上です。恵まれた食糧事情、精緻な体育理論などに裏打ちされて、競技で勝つことを目指してトレーニングするのですから、鬼ごっこなどで日なが野山を駆け巡るよりも大腿四頭筋、大胸筋、上腕三等筋などの筋肉群の発達ははるかに良好だし、第一体格がいいですね。しかし、それは意識的に運動している子供達だけで、家でファミコンに熱中している子供達に関して言えば多分逆です。昔は子供のうちから高脂血症や糖尿病等に罹患するなど考えられなかった。

 最近ちょっと憂慮すべき研究結果が発表されました。それは子供の時の体力と将来の病気に関するものです。メディカル・トリビューンという医療従事者向けのサイトに紹介されていましたので、引用したいと思います。以下にその記事のコピーを貼り付けます。

10代後半の低体力が2型糖尿病のリスク
 10歳代後半の体力が低いことが2型糖尿病の危険因子である可能性を示唆する研究結果が、米国とスウェーデンの共同研究グループによりAnn Intern Med2016; 164: 577-584)に発表された。長期間の追跡が必要になるため、若いころの体力と成人後の2型糖尿病との関係が検討されることはほとんどない。同グループは、196997年に18歳で徴兵されたスウェーデン人男性1534,425例を19872012年(最高年齢62歳)まで追跡。徴兵時に測定した体力(有酸素運動能力および筋力)と2型糖尿病との関係を検討した。

 3,940万人・年の追跡で、34,008例が2型糖尿病と診断されていた。解析の結果、18歳時の有酸素運動能力および筋力が低いことと2型糖尿病発症リスクとの間に独立した関係が認められた。有酸素運動能力および筋力の最高三分位群と比較した最低三分位群の2型糖尿病累積発症率の絶対差は、追跡20年で0.22%、30年で0.76%、40年で3.97%であった。全体として、有酸素運動能力と筋力の両方が低いことは、2型糖尿病発症リスクが約3倍高いことと関係していた。これらの関係はBMIが正常な男性でも認められた。

 子供の頃に走り回って充分遊んでいないと、肥満するような生活習慣を身につけなくても糖尿病にかかりやすくなるということです。幼少時の子供の生活形態を見ると、きちんとした観察結果ではないのですが、たぶん過疎地のほうが都市部よりも外で遊ぶことが多いのではないでしょうか。そして外で遊ぶということは必然的に体を使うことになるので、将来糖尿病にかかりにくくなる、と考えてよさそうです。

 もし都市部にお住まいの親戚の方などに小さいお子さんがいたら、しばらくこちらのご家庭で預かって外を走り回らせてみたらどうでしょうか。その子供達が将来糖尿病になるリスクを1/3に減らすことが出来るのです。それにおうちに小さい子供達の笑い声が満ち溢れると、年をとった私たち大人の生活にも活力が沸いてくるものです。