2017年11月29日水曜日

糖尿病食と血糖値の推移

 せっかくの血糖値測定装置なので、有効活用しようということになり、5日間つまり月曜日の朝から金曜日の昼食までの間、糖尿病食を食べてみました。糖尿病食は一般にカロリーを制限していますので、おなかが空きます。しかしせっかくですので、ある程度極端な条件を課したほうがわかりやすい、そう考えて一日1200KCalの、当院では一番厳しい糖尿病食を5日間食べて過ごすことにしたのです。朝、7時半になったら病院に出かけて朝食を食べる。昼、12時ごろ職員食堂でお昼ご飯を食べる、夜は5時半に職員食堂で夕ご飯を食べるという生活です。

 毎日の血糖値の推移を全部お見せしてもいいのですが、あまり変わり映えしないものですし、単に食後高血糖がかなり有効に抑えられるということが分かっただけなので、二日分ほどここにUPすることにします。私が毎日必要とするカロリー(つまり食べていて体重が増加も減少もしない程度)は多分2000KCal程度だと思います。それに対して1200KCalの摂取カロリーですから毎日800KCalほど不足することになります。その不足分を私の皮下や腹腔内の脂肪で賄うとすれば、毎日100gにやや不足するほどの脂肪を使うことになります。



 つまり5日間で500gほど体重が減少する計算になります。面白いデータが取れて、しかも一週間で0.5㎏のダイエットができる。そのような皮算用に思わず頬がだらしなく緩んできたのも束の間、月曜日の昼食時にはすでに空腹でとてもつらい気持ちになりました。それ以後も少なめの食事に体が慣れるということはなく、食べた後にちっとも満腹感がないし、やがて空腹感が責め苛む。そんな状態が5日間続いたのです。何しろ食事の内容がかなり貧相で、糖尿病食だから仕方ないとはいえ、なんでこんな《実験》を思いついたのだろうなどと、実験開始当日から後悔するという始末でした。

 結論から申し上げます。健康で食事前に空腹を覚える人に1200KCal/dayの糖尿病食は無理。決してお勧めできません。なお、せっかく過酷なダイエットを実行したのですから、体内の脂肪がどの程度燃焼しているかを調べるために、血中のケトン体を測定してみました。その結果はあまり芳しいものではなく(健康という意味では芳しいのかもしれません)、ケトン体は正常範囲内で、あまり体脂肪が好調に燃焼しているとは言えないようでした。今回の教訓ですが、無理なダイエットは長続きしないということにつきます。何しろ、週の後半は頭の中に食べ物のことしか浮かびませんでした。

 なお、18日朝食時のヨーグルトとオリーブ油は病院で用意してもらった食事に含まれるものではなく、あまりの空腹に耐えられなくなって自分で勝手に追加したものです。また19日の朝食と夕食のアーモンド8粒も自分で用意したものです。したがって一日1300KCal程度のカロリー摂取になっていたはずです。糖尿病になりかけている人は、当院で糖尿病教室を開いています。そこでは私がやったような極端な食事指導はしませんので、気軽にお問い合わせください。

2017年11月1日水曜日

口腔内の健康

 医療系のサイトで興味深い記事を見つけました。それは食べることと、心身を健康に保つことの関係について述べたものです。とても大切なことなので、これからご紹介します。以下がその内容です。なじみのないカタカナはできる限り普通の日本語に直しておきました。
 「口腔機能の低下を示す飲食機能虚弱は近年提唱された概念であり、高齢者の虚弱や筋肉量減少、要介護など高齢者医療において問題となるさまざまな危険因子との関連性が注目されている。東京都健康長寿医療センター研究所自立促進と介護予防研究チーム専門副部長の渡邊裕氏は、高齢者を対象に口腔機能と社会機能との関連性を分析し、飲食機能虚弱予防を突破口として高齢者医療のさらなる改善を図る手法を第59回日本老年医学会で検討した。
 渡邊氏は、高齢者の虚弱が進行していく段階を①社会性/心の虚弱期②栄養面の虚弱期③身体面の虚弱期④重度虚弱期-に分け、各段階における具体的な状況について説明した。
 ①では活動量の低下や物事に対する意欲の低下から口腔への関心が薄れ歯を喪失し、②では咬合力の低下に起因するかめない食品の増加などに伴い食欲や食事の多様性が低下する。③では食事量が減少することで筋肉量減少や運動器症候群などが発生し、④では摂食嚥下障害や咀嚼機能不全から要介護状態、運動・栄養障害に陥るという。
 また、虚弱状態が悪循環していく悪循環においても、咬合力や咀嚼機能の低下といった、飲食機能虚弱を構成する各要素が幅広く関与するとした。
 そこで渡邊氏は、口腔機能の維持や改善を図ることで、虚弱や筋肉量減少、要介護、死亡危険度の低減が見込めるかどうかを検証した。
 検証では、東京都に在住する70歳以上の男女約1,200人を対象に、口腔への関心度や歯科受診の有無、外出頻度を従属変数として多重ロジスティック回帰(適切な日本語訳がありません)分析を行い、社会機能・生活機能との関連を分析した。
 その結果、自分の歯の本数を把握していない、もしくは把握していても実際の歯の本数と6本以上差がある場合は口腔への関心度が低下している群(低下群)、5本以内の差であれば口腔への関心度を維持している群(維持群)とすると、低下群は外出頻度の減少と有意に関連していた(図)。



 一方、「昨年より外出頻度が減少したか」との問いに「はい」と答えた群は、咀嚼困難感、口腔乾燥感、1年以内の歯科受診がないことと有意に関連していた。
 また、歯科の非受診群は機能歯数の減少や咀嚼機能、食欲調査票(CNAQ)スコアの低下と有意な関連性が見られた。さらに、「友人の家を訪ねる」「家族や友人の相談に乗る」といった社会活動に消極的である人ほど口腔機能虚弱に該当しやすくなるとの報告もあるという。
 こうした検証結果から、同氏は『航空機能虚弱予防には、地域の介護サービスや歯科医院などが連携して航空への関心を高め、社会機能、航空機能の改善を図ると良いと思われる。今後はそうした手法を確立し、地域へ普及させる必要がある』と述べた。」

 口腔内を含めて身体を清潔に保つこと、外の世界に興味を絶やさぬこと、生きることに貪欲であること、こうしたことが「ピンピンコロリ」にとっても必要なようです。もちろん「ピンピン」だけで「コロリ」抜きのほうがいいとおっしゃる方もいるかと思いますが、どうでしょうか。この世の中に知り合いが一人もいなくなって自分ひとり元気で「ピンピン」していることが果たして幸せかどうか。人間はなぜヒトとしてこの世に意識を持っているのか、そういったことも秋の夜長に考えてみようではありませんか。